日本助産学会誌
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周産期異常の臨床判断力を高める助産教育プログラムの実施と評価
小黒 道子片岡 弥恵子蛭田 明子
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2020 年 34 巻 1 号 p. 92-102

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抄録

目 的

妊婦の高年齢化に伴いハイリスク妊娠が増えており,助産学生が受け持つ妊産婦が異常に移行する場合が少なくない。研究目的は,助産教育においてハイリスク妊娠・周産期異常の知識の習得に加え,臨床判断力および対応力の向上を目標とした新たな教育方法を用いた教育プログラムを開発し,その評価を行うことである。

方 法

ブレンド型学習を基盤に作成した事例を用いての臨床カンファレンス形式とシミュレーションを組み合わせた2つのプログラムを作成した。プログラムの主題は「常位胎盤早期剥離/子癇発作」「妊娠高血圧症候群/HELLP症候群」とした。研究参加者は助産学専攻の大学院1年の学生11名であり,教育プログラム前,直後,4か月後(分娩介助実習後)の3時点における知識と自己効力感を測定しプログラムの評価を行った。分析方法はボンフェローニの検定を用いた。なお本研究は,聖路加国際大学倫理審査委員会の承認を受けて行った(承認番号:16-A064)。

結 果

「常位胎盤早期剥離/子癇知識テスト」の合計得点は,プログラム前の中央値12.0点がプログラム直後24.0点に上昇しており,4か月後20.0点となっていた(p=0.007)。「妊娠高血圧症候群/HELLP症候群知識テスト」の合計得点は,クラス前の中央値24.0点がクラス後には48.0点になり,4か月後も44.0点と維持された(p<0.001)。「常位胎盤早期剥離/子癇の対応効力感尺度」の合計得点は,プログラム前の中央値20.0点が36.0点に上昇し,4か月後35.0点であった(p=0.001)。「妊娠高血圧症候群/HELLP症候群の対応効力感尺度」合計得点は,クラス前中央値15.0点が直後は28.0点に上昇し4か月後25.0点となった(p<0.001)。

結 論

教育プログラムは,助産学生の知識および自己効力感を高め,4か月後まで維持するために効果的な可能性がある。

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