日本助産学会誌
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原著
妊娠中期までの体重増加と食生活が耐糖能異常に与える影響
卯野 陽子藤田 愛山口 咲奈枝
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2020 年 34 巻 2 号 p. 183-193

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抄録

目 的

妊娠中は胎盤から分泌されるホルモンなどの影響により耐糖能異常が起こりやすい。女性は妊娠すると食生活を見直していくが,妊娠後の食生活の変化に加えて妊娠期間を通して約10kgの体重増加が生じることも耐糖能に影響を与えていることが推測される。そこで本研究は,妊娠中期までの体重増加量と食生活に着目し,耐糖能異常に影響を与える要因を検討した。

対象と方法

研究デザインは妊娠初期から妊娠中期までの縦断研究である。対象は2018年3月~2019年6月にA病院で妊婦健診を受けている180名をリクルートした。調査内容は,年齢,非妊時BMI,妊娠中期までの母体体重増加量,妊娠中期の血糖値,食生活,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)である。妊娠中期の血糖値140mg/dl以上を「耐糖能異常群」,それ未満を「正常群」とし,食生活の変化の比較ではχ2検定とt検定を行い,耐糖能異常に影響を与える要因の検討は二項ロジスティック回帰分析を行った。独立変数として,非妊時BMIと妊娠中期までの体重増加量,朝食頻度,妊娠中期の摂取エネルギー量を投入した。

結 果

147名(81.7%)が分析対象となり,耐糖能異常群35名,正常群112名となった。両群ともに非妊時よりも朝食を摂取するようになり,食べる速度に気をつけ,食品購入の際に栄養成分表示を参考にする行動をとっていた。耐糖能異常の要因は,非妊時BMI(オッズ比1.18(95%信頼区間1.05-1.32))と妊娠中期までの体重増加(オッズ比0.78(95%信頼区間0.61-0.99))であった。

結 論

耐糖能異常予防のためには,妊娠中期まではつわりや嗜好の変化を伴うが,食生活の変化があることから,早期の食事指導と適切な体重増加が得られる指導が必要である。また,非妊時BMI区分による妊娠初期・中期・後期の至適体重増加量の指針検討が必要と考える。

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