2021 年 35 巻 1 号 p. 57-65
目 的
出産のヒューマニゼーションとは,母児の生理学的プロセスを促すようなケアであり,この概念は,ラテンアメリカ諸国の法律にも示されるようになってきている。本研究の目的は,ラテンアメリカの関係法規において,出産のヒューマニゼーションがどのようなケアとして捉えられているかを分析することである。
方 法
ラテンアメリカのスペイン語とポルトガル語を母国語とする20ヵ国の政府,保健省等のホームページから,出産のヒューマニゼーションに関する最新の関係法規にアクセスした。法規によって保障される妊産褥婦と新生児へのケアを抽出し,世界保健機関(WHO)の正常出産ガイドラインで推奨されているケア項目と比較した。
結 果
インターネット検索で,7ヵ国の関係法規が該当した。具体的には,アルゼンチンの法律では,妊産褥婦・新生児へのケア16項目が,出産のヒューマニゼーションを実現するためのケアとして保障されていた。同様に,チリ12項目,コロンビア18項目,エクアドル16項目,ニカラグア17項目,パナマ23項目,ペルー26項目のケアが法規で保障されていた。2ヵ国以上の法規で保障されたケアは22項目あり,そのうち,WHOガイドラインの推奨項目と重なるケアは13項目だった。関係法規には,妊産褥婦や新生児を尊重する,ケア提供者としての態度や姿勢に関する記述が多く,分娩各期の臨床的な手技・実践に関する記述は少なかった。
結 論
出産のヒューマニゼーションを実現するためのケアは,国毎に異なっていたが,妊産褥婦や新生児を尊重する,ケア提供者としての態度や姿勢が重視されている点で共通していた。出産のヒューマニゼーションは,その継続性が課題となるが,ラテンアメリカでは法令化されることにより,継続性の担保を試みていることが理解でき,その動きから日本も学べることがあるのではないかと考えられた。