日本助産学会誌
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原著
産後ケア事業利用者の特徴―妊娠35週と産後1か月時点での縦断的調査から―
伴 裕貴米澤 かおり春名 めぐみ臼井 由利子笹川 恵美
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2024 年 38 巻 1 号 p. 15-24

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抄録

目 的

産後ケア事業の利用者の特徴について,特に産後の心身の不調や育児不安,最も身近な支援者になりうるパートナーの特徴や育児手技の指導の有無に注目し,利用者と非利用者の比較から検討する。

対象と方法

2019年5月~2020年2月に妊娠中から産後1か月にかけて,Web自記式質問調査を利用した縦断調査を行った。一回目調査は妊娠35週以降,二回目調査を産後1か月時点で行った。妊婦健診の際に研究説明書を渡された2,402名のうち一回目の自記式Web調査には667名(27.8%)が回答し,二回目のWeb調査に回答したのは448名(18.7%)であった。二時点とも回答があり,産後ケア事業利用の有無を回答した448名(18.7%)を解析対象とした。産後ケア事業について利用があったと回答した群と利用がなかったと回答した群の2群に分け,χ2検定,Mann-Whitney U検定及び独立したt検定を行った。

結 果

産後ケア事業の利用者に有意に関連する特徴として,家庭の世帯年収が900万円以上であること,有職者であること,妊娠を望んでいたこと,妊娠した時のパートナーの反応が肯定的ではなかったこと,初回授乳時期が出産翌日以降であったこと,産後1か月時点でのパートナーとの関係に緊張感があること,産後1か月時点でのSF-8日本語版の身体的サマリースコアの得点が低いことが明らかになった。

結 論

産後ケア事業の利用と出産後1か月時点での身体的なQoL(Quality of Life)の低さは関連しており,休息が求められている他に,パートナーとの関係性を検討する必要性が示唆された。また,現行の産後ケア事業の利用には経済的なハードルが存在している可能性が考えられた。産後ケア事業を必要とする人が利用できるよう,身体的なQoLやパートナーとの関係への配慮及び経済面への支援を今後検討する必要があると考えられた。

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