日本助産学会誌
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原著
総合周産期母子医療センターにおける妊産婦の児に対する愛着形成の変化と周産期ハイリスクとの関連
佐田 早苗堤 千代龍 聖子伊東 貴美代
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2024 年 38 巻 1 号 p. 25-35

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抄録

目 的

総合周産期母子医療センターで出産したじょく婦を対象に,抑うつ状態およびボンディングと育児環境および周産期ハイリスク要因との関連について検証した。

対象と方法

2019年4月~2020年3月に,当該施設で出産した妊産婦625名を対象に実施した,退院時,2週間健診時,1か月健診時の保健指導で得られた「育児支援チェックリスト」「エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)」「赤ちゃんへの気持ち質問票(ボンディング)」の回答を分析対象とした。EPDSとボンディングは,3時点で経時的に記述し,それぞれに育児環境リスク11項目および周産期ハイリスク12項目との関連をみた。また,それぞれの退院時と1か月後の変化に関連する要因を検討するため,ベースライン退院時の値と出産経験数を共変量として調整した重回帰分析を行った。

結 果

EPDSとボンディングはいずれも経時的に有意に改善していた(p for trend<0.0001)。しかしながら,多因子解析の結果,退院時と比較して1か月後のEPDSが有意に悪化した因子は「心理相談の経験や精神科既往がある」(β=0.77,p=0.006),「夫に相談できない」(β=1.68,p<0.0001),「実母に相談できない」(β=1.25,p=0.0007)であった。一方で,「若年出産」(β=−1.66,p=0.019)は有意に改善していた。また,退院時と比較して1か月後のボンディングが有意に悪化した因子は,「緊急帝王切開」(β=0.38,p=0.002),「夫に相談できない」(β=0.47,p=0.017)であった。

結 論

総合周産期母子医療センターで出産したじょく婦において,EPDS,ボンディングともに退院時から1か月後にかけては自然に改善する者が多いが,元来のメンタルヘルスに課題を持つ者や,身近な相談相手がいないことはこれらの改善を阻害していた。一方,「若年出産」した母親の抑うつは改善を示し,ハイリスク妊産婦を対象とする医療機関ならではの支援が奏功していると考えられた。

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