日本助産学会誌
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双子の父親役割獲得と発展のプロセス
神崎 真姫酒井 ひろ子
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2024 年 38 巻 1 号 p. 112-125

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抄録

目 的

双子の父親が,妊娠判明時より出生後3ヵ月から約1年の経験をもとに,父親役割を獲得し発展するプロセスを捉え類型化し,共通性を見出すことである。

方 法

双子の父親10名を対象に,インタビューガイドを用いてオンラインによる半構造化面接を行った。面接内容を逐語録にし,コード化したデータをカテゴリに分類し,複線径路・等至性モデルによる分析を行った。

結 果

調査には,初めて父親になる7名と上に子どもがいる3名が参加した。分析の結果,9つの必須通過点と分岐点が示された。父親らは,妊娠が判明すると喜びを上回る驚きを経験する一方で,感情を抑制した者もいた。父親らは,妻が多胎妊娠の判明後から妊娠期間を通して【母児のリスクへの心配・不安】を持ちながら【不調の妻をサポート】していたが,【双子の父親になるイメージが持てなかった】まま過ごしていた。【児が出生し双子の父親になる】と児の入院中は【写真や動画で児の様子を確認した】。【児の退院】から【夫婦で育児を実践】し,【過酷な育児の現実に直面する】中で,【育児負担】を感じながら工夫し,【父親としての役割を模索】していた。そして,時間の経過とともに自己の内面と向き合い双子の父親役割を発展させていた。

結 論

双子の父親について,既存の研究では育児経験やメンタルヘルスの現状までが明らかになっていた。本研究で,妊娠期から現在までのプロセスを明らかとしたことで,これらに加え,発展していく父親役割獲得プロセスの構造化ができた。父親が妊娠期から「多胎」の特性を理解し育児の心構えを持つことは,早期からの親役割発展に重要であり,父親が育児期に抱く葛藤に対応する力となる可能性がある。また,夫婦で育児を検討し決定することは,育児期の家族発達につながる重要なプロセスである。支援者は,夫婦でパートナーシップが発揮できるよう,父親の個々が持つ背景を捉えて理解し支援する必要がある。

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