2024 年 38 巻 1 号 p. 103-111
目 的
育児期における夫婦間のコミュニケーション態度が夫婦関係満足度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
対象と方法
1歳6か月ならびに3歳児健診を受診した児の両親を対象として質問紙による横断的調査を行った。調査内容は,夫婦間コミュニケーション態度尺度,夫婦関係満足度,基本属性とした。コミュニケーション態度が夫婦関係満足度に与える影響を検討するために,夫婦関係満足度を従属変数,夫婦間コミュニケーション態度の3態度得点(「接近・共感」「威圧」「回避」)を独立変数とする重回帰分析(強制投入法)を行った。なお,夫婦の態度得点をもとにTwo Stepクラスター分析により,コミュニケーション態度パターンの類型化を行い,夫婦関係満足度に違いがあるかを対応のないt検定により検討した。
結 果
936組の夫婦に配布し,回収した夫婦ペアデータ116組(回収率12.4%)を全て対象とした。重回帰分析(調整済みR2 夫0.46 妻0.5,いずれもp<0.01)の結果,夫婦関係満足度に最も強い影響力を示したコミュニケーション態度は,夫では「接近・共感」(β=0.522),次いで「威圧」(β=−0.172),「回避」(β=−0.149)であった。妻では「接近・共感」(β=0.557),次いで「回避」(β=−0.223)であり,「威圧」については有意ではなかった。クラスター分析により,接近共感的態度得点が高い「接近共感夫婦群」と威圧・回避的態度得点が高い「威圧回避夫婦群」に分類された。t検定の結果,夫・妻ともに「接近共感夫婦群」で夫婦関係満足度が有意に高かった。
結 論
育児期における夫婦間のコミュニケーション態度が夫婦関係満足度に及ぼす影響は大きい。特に,夫婦関係満足度を高めるためには,接近共感的コミュニケーション態度と相手と向き合う姿勢が重要であることが示唆された。