日本助産学会誌
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原著
産後に児と過ごすことができない母親の産後ケア事業利用を促進・阻害する要因の明確化
金子 敦子片岡 弥恵子
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2025 年 39 巻 1 号 p. 154-165

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抄録

目 的

母親のみの産後ケア事業の利用は,国が勧めているにもかかわらず普及していない。本研究の目的は,母親のみの産後ケア事業利用の受け入れに関する促進・阻害要因を明らかにすることである。

対象と方法

研究デザインは質的記述的研究とした。研究対象者は東京都の産後ケア事業委託施設の施設長または産科・産婦人科の看護管理者で,母親のみの産後ケア事業利用者を受け入れた経験がある6名であった。データ収集は半構造化インタビューで実施した。得られたデータは,Consolidate Framework for Implementation Research:CFIRに基づき分析した。

結 果

研究対象者6名の所属施設はすべて助産所であった。CFIRの4領域と10の構成概念で9つの促進要因と7つの阻害要因を抽出した。イノベーションの特性の促進要因は《助成金がでるため他の支援方法より利用者の経済的な負担が小さい》ことなどで,阻害要因は《母親のみの産後ケア事業利用が自治体の利用基準に合致していない》ことなどであった。外的セッティングの促進要因は《日頃から自治体と密に連携を図る》こと,阻害要因は《産後に児と過ごすことができない母親を多職種で支援するシステムが構築されていない》ことなどであった。内的セッティングの促進要因は《母親たちの多様なニーズを尊重してケアを提供する》ことなどであった。個人特性の促進要因は,産後ケア事業委託施設の助産師に《産後ケア事業関連法案や施策の主旨を理解して自治体と交渉する力がある》こと,阻害要因は《支援の際に何をしてよいかわからないなどの感情が生じる》ことなどであった。

結 論

CFIRの4領域と10の構成概念で9つの促進要因と7つの阻害要因が抽出された。本研究で抽出されなかったCFIRの構成概念の促進・阻害要因を明らかにすることや,助産師以外のステークホルダーの視点を調査することが今後の課題である。

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