日本助産学会誌
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原著
「もう一度,産んでみたい」と思える出産体験
髙梨 和恵
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2025 年 39 巻 2 号 p. 325-337

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抄録

目 的

本研究の目的は,病院・診療所で出産した女性の「もう一度,産んでみたい」と思える出産体験とはどのようなものかを明らかにすることである。

対象と方法

質的記述的研究デザインを採用し,株式会社クロスマーケティングに登録している全国のモニターから自然分娩6名,麻酔分娩3名の計9名を対象とした。分析は,インタビュー内容の逐語録を繰り返し読み返し,コード化を行い,意味の類似性に基づいてサブカテゴリー化に分類した後,抽象度を高めてカテゴリー化,テーマ化まで行った。

結 果

241のコードから82のサブカテゴリー,17のカテゴリー,8のテーマが抽出された。もう一度産んでみたいと思える出産体験とは,【対象者が思い描く出産】として〈出産に対するポジティブな思いと行動〉を示す一方で,〈出産に対する恐怖と不安〉や〈痛みなく安全な出産への希望〉を抱いた体験であり,【心身に負担のない出産】として,身体的に〈楽な出産〉と,心理的にも楽しめた〈楽しい出産〉の体験であった。また,分娩時に【赤ちゃんが出てくる体感】を味わい,出産直後には,心身の【解放】感や,【身体の変化に対処ができた達成感】を感じることができた出産であった。さらに,【幸福感を味わえる出産】を実感し,〈生命の神秘〉や〈我が子への感謝〉とともに【家族や医療者との絆】を強く感じ,より充実した理想的な体験を求める【再チャレンジへの希求】が生まれる体験であった。

結 論

本研究は,出産の満足度が助産所よりも低いと言われる病院,診療所においても,女性自身が主体的に意思決定を行えた体験であり,出産をポジティブなライフイベントとして捉え,次の出産でより充実した出産をしたいという女性の前向きな意欲が生じた体験であったと示唆された。

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