目 的
助産師の主体的かつ積極的なかかわりは妊産褥婦の利益に貢献し,医師の働き方改革を発端としたタスクシフト/シェアの推進にも貢献する。しかしながら,助産師が主体的に働く場として期待されている院内助産の数は増加する兆しがなく,その理由の一つに助産診断や助産技術などの責任に対する不安が指摘されている。そのため,本研究では,進展するタスクシフト/シェアを背景に,助産師の自立した働き方を実現するためには何が必要なのか,先行研究のレビューから助産師の職務上における使命感に影響を及ぼす要因を検討した。
対象と方法
本研究では,特性的自己効力感の高さは漸進的使命感に正に影響する,特性的自己効力感の高さは経験の質を介して漸進的使命感に正の影響を及ぼす,2つの仮説を導出した上で,漸進的使命感尺度を従属変数,特性的自己効力感尺度を独立変数,看護職者経験の質評価尺度を媒介変数とした媒介分析を行った。全国2082件の分娩取扱施設から無作為に抽出した100施設のうち,研究の同意が得られた35施設,605名の助産師を対象とした。184名(回収率30.4%)より回答を得て,有効回答数176名を分析対象とした(有効回答率95.7%)。調査期間は2024年4月~7月である。
結 果
対象者の平均年齢は38.1(SD 10.6)歳,平均臨床経験年数は14.3(SD 9.8)年,平均助産師経験年数は12.9(SD 9.5)年であった。媒介分析の結果,特性的自己効力感が漸進的使命感に直接的に影響を及ぼす直接効果と看護職者経験の質の間接効果の両方が示され,2つの仮説が支持される結果となった。
結 論
助産師の漸進的使命感を高めていくには,経験した内容を自身またはファシリテーターと共に評価し,次に向けての課題を認識し言語化する省察のプロセスを辿ることが重要であることが示唆された。また,本研究で用いた漸進的使命感は新しい理論であるが,Cronbach's α係数に示された尺度の信頼性,2つの仮説が支持されたことから考えて,再現性の実証の一端に貢献できたと考えられる。
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