日本助産学会誌
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最新号
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巻頭言
総説
  • 山田 桃子, 米澤 かおり, 春名 めぐみ
    2025 年39 巻2 号 p. 229-242
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/05/31
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は新生児集中治療室における末梢静脈カテーテル(PIVC)を対象にスコーピングレビューを実施し,(1)PIVC使用に伴う合併症の発生割合,(2)PIVC合併症発生の関連要因,(3)PIVC合併症対策に関する知見を明らかにし,これらを網羅的に整理,把握することを目的とした。

    方 法

    検索エンジンPubMedを通じたMEDLINEのデータベース,CINAHL,医学中央雑誌を用いて2022年1月までに発表された文献の検索を行った。選択基準は,(1)新生児のPIVC合併症の発生割合が記載されている,(2)新生児のPIVC合併症の関連要因または予防方法が記載,(3)原著論文である観察研究,ランダム化比較試験,レビュー,症例報告,シンポジウム,会議録,ガイドライン,解説,総説,(4)英語または日本語で記載された論文とした。除外基準は,(1)新生児以外が対象,(2)PIVC以外のカテーテルが対象である論文とした。著者らがスクリーニングを行い,合併症の割合,関連要因,合併症対策に関連した内容を抽出した。

    結 果

    47件の論文が抽出された。PIVCの合併症の発生割合は,45.6~94.6%であり,浸潤が1.0~78.0%,血管外漏出2.4~84.0%,閉塞1.4~77.3%であった。合併症の関連要因は,在胎週数,体重,抗生剤の使用,高カロリー輸液の使用,カテーテル穿刺の合計試行回数,留置部位,薬剤の間欠または持続投与などがPIVC合併症と関連があると示されていた。PIVC合併症対策として,PIVC合併症発生時の対応のシミュレーショントレーニングやアルゴリズムの作成と導入を含む看護師教育とPIVC管理方法への介入が抽出された。

    結 論

    PIVC合併症の発生割合は高く,中でも浸潤・血管外漏出・閉塞が多く,解決すべき問題であるといえる。PIVC合併症の関連要因は,介入困難なものと,介入可能であるものがあることが分かった。PIVC合併症対策として,看護師教育の充実,管理方法への介入が重要である。

原著
  • 土居岸 悠奈, 山波 真理, 加納 尚美
    2025 年39 巻2 号 p. 243-254
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/06/27
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,助産学実習において学生が困難に感じた体験とレジリエンスの構成要素を明らかにすることである。

    対象と方法

    大学専攻科に在籍しており,助産学実習の単位を修得している助産学生を対象とした。インタビューガイドを用いて半構造化インタビューを実施し,得られたデータから逐語録を作成し質的記述的に分析した。本研究は,茨城県立医療大学研究倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号810)。

    結 果

    研究参加者は12名であった。学生が助産学実習で困難に感じた体験として,【未熟さによる不安や恐怖】【支持してもらいたい人達からのネガティブな対応】【昼夜を問わない責任を伴う実習への適応の難しさ】の3のコアカテゴリーが生成された。また,助産学実習における学生のレジリエンスの構成要素として,【感情調整】【支援者の存在の認識】【人間関係の構築】【知識・技術の向上】【気分転換】【目標とする助産師像の形成】の6のコアカテゴリーが生成された。

    結 論

    助産学実習において学生は様々な困難を体験していたが,複数のレジリエンスを用いながら実習に適応し,困難な状況を乗り越えていた。実習指導者や教員には,レジリエンスの構成要素が効果的に働くような学生との関わりや教育的配慮が求められると考えられた。

  • 中村 康香, 山口 典子, アンガホッファ 司寿子, 武石 陽子, 吉沢 豊予子
    2025 年39 巻2 号 p. 255-267
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/05/08
    ジャーナル フリー

    目 的

    男女生殖世代における妊孕性リテラシー尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討する。

    対象と方法

    既存の妊孕性に関する知識を測定する尺度や妊孕性に影響する要因に関する先行研究及び文献検討から,妊孕性リテラシー尺度として,尺度案60項目からなる質問紙を作成した。男女生殖世代に対してWeb調査を行い,尺度の信頼性と妥当性を検証した。

    結 果

    648名を分析対象とした。探索的因子分析で,知識に関する【女性の妊孕性に影響する年齢と疾患に関する知識】【男性の生殖能力に影響する物理的リスクに関する知識】【男性の生殖能力に影響する生活習慣に関する知識】【男性の性機能と生殖能力に関する知識】とセルフケア行動能力に関する,【情報をもとに自分の状況のリスク判断することができる能力】【将来のために意思決定し行動できる能力】【支援を求めたりコミュニケーションをとることができる能力】の7因子31項目となった。弁別的・収束的妥当性が確保され尺度化成功率は100%であった。既知集団妥当性として不妊治療有群は不妊治療無群よりも有意に得点が高かった(p<.001~.039)。また一般向け健康リテラシーと妊孕性リテラシー尺度のセルフケア行動能力に関する因子及びその合計得点との間には中程度の有意な相関が認められた(r=.420–.596,p<.01)。信頼性係数は尺度全体で.911であり,下位尺度では.794–.881であった。

    結 論

    男女生殖世代を対象とした,妊孕性リテラシー尺度の妥当性と信頼性が確認され,今後のリプロダクティブライフプランを促進する介入への応用が期待される。

  • 鈴木 梓, 竹内 翔子, 篠原 枝里子, 中村 幸代
    2025 年39 巻2 号 p. 268-277
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/06/27
    ジャーナル フリー

    目 的

    無痛分娩に携わる助産師を対象とし,無痛分娩での助産ケアに関する認識と実践状況を明らかにして,助産ケアの実践状況に影響を与える関連要因について分析することである。

    対象と方法

    全国の無痛分娩取扱施設に勤務する助産師927名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。分析方法は,無痛分娩での助産ケアに関する認識については探索的因子分析を行い,助産ケアの実践状況については記述統計を用いて分析した。さらに,助産ケアの実践状況に影響を与える関連要因を探索するために,多重ロジスティック回帰分析を実施した。本研究は横浜市立大学の倫理審査委員会での承認を得て実施した(承認番号:一般2023-030)。

    結 果

    質問紙調査の有効回答数は447件(有効回答率:98.8%)であった。無痛分娩での助産ケアに関する認識の因子構造は,【無痛分娩での助産ケアに対する自己課題がある】,【無痛分娩についてより深く学び経験したい】,【無痛分娩を選択した妊婦の主体性を引き出したい】,【無痛分娩における妊娠期からの助産ケアの必要性を感じる】,【無痛分娩だからこそのニーズや支援がある】の5つで構成されていた。無痛分娩での助産ケアの実践状況は,全31項目中26項目で「実施あり」が80%以上に達し,特に分娩期ケアに関連する重要な項目が実践されていた。無痛分娩での助産ケアの実践状況と最も関連している要因は,認識_第5因子の因子得点【無痛分娩だからこそのニーズや支援がある】(OR:1.84,95%CI:1.33-2.55)であった。

    結 論

    無痛分娩での助産ケアの実践状況に最も影響を与える要因は,【無痛分娩だからこそのニーズや支援がある】という助産師の認識であった。この認識を高めるためには,無痛分娩に携わる助産師が無痛分娩特有のニーズに対する理解を深め,それに関連するケアを明確化することが必要である。

  • 野原 ひかり, 井上 尚美, 若松 美貴代
    2025 年39 巻2 号 p. 278-289
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/08/22
    ジャーナル フリー

    目 的

    離島で暮らす若年妊婦が,出産する選択に至った経緯を知ることにより,出産への自己決定プロセスと必要とされる支援を明らかにする。

    方 法

    A県の離島に住む,過去に10代で妊娠・出産した20代前半までの女性にインタビューを行い,構造的ナラティブ分析とテーマ的ナラティブ分析を組み合わせた分析を行った。

    結 果

    対象者9名の妊娠時の年齢は15歳から19歳で,当時,学生や就職中の者もいたが,妊娠をきっかけに学業を中断した者,将来的になりたかった職業を諦める者もいた。構造的分析より,〈状況〉〈行動〉〈評価〉〈帰結〉〈結尾〉の5種類の要素が抽出され,〈状況〉では,悪阻や腹部の増大などの体の変化や月経が来ず妊娠に気付く,月経不順があり妊娠に気付くのが遅れたなどが示された。妊娠判明時には6名が自身で出産を決意し,3名は動揺や戸惑いがあったが最終的に出産を決意していた。〈行動〉では,親やパートナーが出産することを賛成した5名に対し,反対された4名も,周りが彼女らの意思の強さに折れ,出産することを認め,〈帰結〉では全ての対象者が出産することを改めて決意するというプロセスを辿っていた。テーマ分析では,妊娠が判明し出産決意後に,パートナー及び家族も賛成し出産を改めて決意,パートナーは賛成,親から反対されたが説得し出産を改めて決意,パートナー及び家族にも反対されたが説得し改めて出産を決意の主な3パターンが示された。

    結 論

    妊娠し出産を決めるまでに迷いがない者が多いことから自己決定に費やす時間は短く,関わるのは本人,パートナー及び家族であり,介入には限界があった。離島では,人とのつながりが強く狭いコミュニティであるからこそ,プライバシーが守られながらも行動・相談できる環境を整えることが重要である。その上で,ライフプランを踏まえた上での性教育が大前提であり,10代で妊娠した時に必要となる知識と情報,将来も見据えた選択肢の中から,自己決定できるような支援が求められる。

  • 佐藤 美紀, 塩野 悦子
    2025 年39 巻2 号 p. 290-301
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/07/23
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は羊水塞栓症を発症した産婦に対応した助産師の体験を明らかにし,羊水塞栓症発症に対する助産師の課題について考察することを目的とする。

    対象と方法

    羊水塞栓症を発症した産婦に対応した経験のある助産師5名に,半構造的面接を行い,羊水塞栓症発症の経緯に応じた助産師の対応や心理などの体験を尋ね,質的記述的に分析した。

    結 果

    研究協力者が対応した事例は全て子宮型羊水塞栓症であった。羊水塞栓症を発症した産婦に対応した助産師の体験として,66のコードが抽出され,そこから23のサブカテゴリーと7つのカテゴリーが生成された。羊水塞栓症を発症した産婦に対応した助産師は,初発症状の出現直後には【何をしても止まらない出血に恐怖を感じながら翻弄される】,【産婦の症状や周辺の動きから急変の兆候を察知する】,救急対応の開始以降には【産婦の急激な重症化の場面に衝撃を受ける】,【助産師として救急対応力のなさを思い知る】,【何が何でも産婦の命を助けたい思いが募る】,産婦への対応後には【産婦や家族に対する自責の念に駆られる】,【この体験を無駄にしたくないと切に思う】体験をしていた。

    結 論

    羊水塞栓症を発症した産婦に対応した助産師の体験として,何をしても止まらない出血に対する強い恐怖や,産婦の急激な重症化の場面への衝撃,対応後の産婦や家族に対する自責の念,この体験を無駄にしたくないという思い等,特徴的な体験が明らかとなった。助産師は,常に羊水塞栓症に対応する当事者意識を持ち,羊水塞栓症の特徴的な経過を理解し,日頃からの訓練や他部門との連携を進めることが重要である。また,対応した助産師へのメンタルヘルスケアの必要性も示唆され,羊水塞栓症を発症した産婦に対応した助産師の心理に関する理解が広まることも重要である。

  • 青木 由紀, 藤井 宏子
    2025 年39 巻2 号 p. 302-310
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/08/05
    ジャーナル フリー

    目 的

    助産師の主体的かつ積極的なかかわりは妊産褥婦の利益に貢献し,医師の働き方改革を発端としたタスクシフト/シェアの推進にも貢献する。しかしながら,助産師が主体的に働く場として期待されている院内助産の数は増加する兆しがなく,その理由の一つに助産診断や助産技術などの責任に対する不安が指摘されている。そのため,本研究では,進展するタスクシフト/シェアを背景に,助産師の自立した働き方を実現するためには何が必要なのか,先行研究のレビューから助産師の職務上における使命感に影響を及ぼす要因を検討した。

    対象と方法

    本研究では,特性的自己効力感の高さは漸進的使命感に正に影響する,特性的自己効力感の高さは経験の質を介して漸進的使命感に正の影響を及ぼす,2つの仮説を導出した上で,漸進的使命感尺度を従属変数,特性的自己効力感尺度を独立変数,看護職者経験の質評価尺度を媒介変数とした媒介分析を行った。全国2082件の分娩取扱施設から無作為に抽出した100施設のうち,研究の同意が得られた35施設,605名の助産師を対象とした。184名(回収率30.4%)より回答を得て,有効回答数176名を分析対象とした(有効回答率95.7%)。調査期間は2024年4月~7月である。

    結 果

    対象者の平均年齢は38.1(SD 10.6)歳,平均臨床経験年数は14.3(SD 9.8)年,平均助産師経験年数は12.9(SD 9.5)年であった。媒介分析の結果,特性的自己効力感が漸進的使命感に直接的に影響を及ぼす直接効果と看護職者経験の質の間接効果の両方が示され,2つの仮説が支持される結果となった。

    結 論

    助産師の漸進的使命感を高めていくには,経験した内容を自身またはファシリテーターと共に評価し,次に向けての課題を認識し言語化する省察のプロセスを辿ることが重要であることが示唆された。また,本研究で用いた漸進的使命感は新しい理論であるが,Cronbach's α係数に示された尺度の信頼性,2つの仮説が支持されたことから考えて,再現性の実証の一端に貢献できたと考えられる。

  • 村田 悦子, 國分 真佐代
    2025 年39 巻2 号 p. 311-324
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,産後ケアにおける助産師と保健師の連携に関する経験を明らかにすることである。

    方 法

    対象は臨地経験3年以上で,産後ケア事業において標準ケアに1年以上関与あるいは実施している助産師と保健師とした。産後ケアの開始から終了まで各々の連携に関する経験について半構造化面接を行い,質的記述的分析をした。

    結 果

    対象者は助産師5人・保健師3人であった。産後ケアにおける助産師と保健師の連携に関する経験は,両者が産後ケア開始前から,[助産師と保健師が顔の見える関係をつくる]ことで良い連携ができると考えており,母親としての自律を目標に,[母親との信頼関係をつくる]ことを考えていた。産後ケア実施中は,[専門性を活かして個別性のある授乳ケアや個別指導を行う]助産師と,[専門的な知識と判断から,産後ケア後の母親にあった社会資源につなげる]保健師が,それぞれの専門性を活かした支援を行い母子の生命を守るために協働していることが明らかになった。しかし,産後ケア終了後の継続支援では,[産後ケア後の母親を継続支援するために保健師からのフィードバックを希望する]助産師と,[産後ケア事業後の母親は保健師が地域で支援する]という保健師の思いにすれ違いが生じていた。

    結 論

    両者は,産後ケア開始前から産後ケア終了後まで連携の経験は共通しており,協働していた。しかし,産後ケア終了後の支援に関する両者の思いには,専門性によるすれ違いがあった。地域における母子家族の健康のための継続支援として,互いの専門性・役割をより一層尊重し,連続的な協力関係を展開していく必要があると示唆された。

  • 髙梨 和恵
    2025 年39 巻2 号 p. 325-337
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,病院・診療所で出産した女性の「もう一度,産んでみたい」と思える出産体験とはどのようなものかを明らかにすることである。

    対象と方法

    質的記述的研究デザインを採用し,株式会社クロスマーケティングに登録している全国のモニターから自然分娩6名,麻酔分娩3名の計9名を対象とした。分析は,インタビュー内容の逐語録を繰り返し読み返し,コード化を行い,意味の類似性に基づいてサブカテゴリー化に分類した後,抽象度を高めてカテゴリー化,テーマ化まで行った。

    結 果

    241のコードから82のサブカテゴリー,17のカテゴリー,8のテーマが抽出された。もう一度産んでみたいと思える出産体験とは,【対象者が思い描く出産】として〈出産に対するポジティブな思いと行動〉を示す一方で,〈出産に対する恐怖と不安〉や〈痛みなく安全な出産への希望〉を抱いた体験であり,【心身に負担のない出産】として,身体的に〈楽な出産〉と,心理的にも楽しめた〈楽しい出産〉の体験であった。また,分娩時に【赤ちゃんが出てくる体感】を味わい,出産直後には,心身の【解放】感や,【身体の変化に対処ができた達成感】を感じることができた出産であった。さらに,【幸福感を味わえる出産】を実感し,〈生命の神秘〉や〈我が子への感謝〉とともに【家族や医療者との絆】を強く感じ,より充実した理想的な体験を求める【再チャレンジへの希求】が生まれる体験であった。

    結 論

    本研究は,出産の満足度が助産所よりも低いと言われる病院,診療所においても,女性自身が主体的に意思決定を行えた体験であり,出産をポジティブなライフイベントとして捉え,次の出産でより充実した出産をしたいという女性の前向きな意欲が生じた体験であったと示唆された。

資料
  • 蚊口 理恵, Hensley Joel, 滝川 由香里, 神徳 備子, Barrett Geraldine, 江藤 宏美
    2025 年39 巻2 号 p. 338-346
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/05/31
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,計画外妊娠をスクリーニングする質問票The London Measure of Unplanned Pregnancy(以下,LMUP)日本語版の言語的妥当性を踏まえて開発することである。

    方 法

    LMUP 日本語版は,第1段階:2名による独立した順翻訳,第2段階:研究者による協議・順翻訳の統合,第3段階:2名による独立した逆翻訳,第4段階:研究者による協議・日本語版(暫定版)作成,第5段階:再検討,を経てLMUP日本語版を作成した。

    結 果

    LMUP日本語版の作成過程における研究者協議ならびに再検討ではLMUP原文開発者であるGeraldine Barrettとの検討の結果,第5段階にて言語的妥当性を検討し,日本語版を確定した。翻訳過程において検討を要した主な内容は,「In the month that I became pregnant」や「Just before I became pregnant」など,回答者により様々な時間軸で捉えられる言語間で生じる意味やニュアンスの差異を最小にするように検討した。

    結 論

    一連の翻訳手順を経て,言語的妥当性を踏まえたLMUP 日本語版を開発した。

  • 中本 咲鈴, 篠原 枝里子, 竹内 翔子, 中村 幸代
    2025 年39 巻2 号 p. 347-357
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/06/18
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,無痛分娩を希望する妊婦に対する出産への主体性を引き出す助産ケアについて実態を明らかにし,自然分娩との比較を通して無痛分娩を希望する妊婦に対する出産への主体性を引き出すために必要な助産ケアの示唆を得ることである。

    対象と方法

    首都圏の自然分娩と無痛分娩を取り扱う施設に勤務する助産師146名を対象とし,無記名自記式質問紙調査を実施した。対象者の選択基準は,現在妊婦健診の業務に携わっている,助産師としての経験年数が3年以上の助産師とした。主な分析方法は,妊婦の出産への主体性を引き出す助産ケアについて基本統計量を算出し,その後Mann-WhitneyのU検定にて変数間の差の検定を行った。本研究は横浜市立大学の倫理審査委員会での承認を得て実施した(承認番号:F230800034)。

    結 果

    質問紙調査の有効回答数は97名(回収率69.1%,有効回答率96.0%)であった。妊婦の出産への主体性を引き出す助産ケアとして実施率が高かった項目は「妊婦の頑張りを認める言葉かけを行う(自然分娩99.0%,無痛分娩96.9%)」,「健診時は必須の健診事項だけでなく,不安や疑問など妊婦自身の話を聞くことを大事にしている(自然分娩97.9%,無痛分娩98.9%)」,「妊婦の発言を認め,尊重している(自然分娩97.9%,無痛分娩96.9%)」であり,実施率が低かった項目は「他の妊婦との交流を促す(自然分娩28.9%,無痛分娩32.0%)」であった。また無痛分娩で出産予定の妊婦に対する出産への主体性を引き出す助産ケアに対する意識については,ほとんどの項目で「自然分娩と同様である」の回答が最も高い割合を占めた。無痛分娩での助産ケアの属性比較にて有意差があったのは,無痛分娩における出産への主体性を引き出す助産ケアに関する教育・研修等の受講の有無であった。

    結 論

    出産への主体性を引き出す妊娠期の助産ケアは自然分娩でも無痛分娩でも同様の意識の元,同様の主体性を引き出す助産ケアを行っていた。また,無痛分娩を希望する妊婦の出産への主体性を引き出す助産ケアについて,教育・研修等の受講の有無で助産ケア実施に有意差があったことから,助産師が教育・研修等を受けることが,無痛分娩を希望する妊婦の出産への主体性を引き出す助産ケアの実施につながると考えられた。

  • 伊藤 綾音, 脇本 寛子
    2025 年39 巻2 号 p. 358-369
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    目 的

    生後一か月から三歳までの子どもをもつ父親が,妊娠中から育児期にかけて,専門職者からどのような子育て支援を望んでいるのかを明らかにすることである。

    対象と方法

    X県Y市の3施設において,生後1か月から三歳までの子どもをもつ父親を対象に,無記名自記式質問紙法を行った。

    結 果

    研究対象者は113名(有効回答率32.1%)であった。父親の支援ニーズの多かった上位3項目は,「30. 妻・子どもへの支援」,「29. 妻の精神面へのサポート」,「23. 出産のリスク・処置への説明」であった。支援ニーズの少なかった下位3項目は,「13. パパ友をつくる場の提供」,「12. 父親同士で話し合う機会」,「9. 父親のロールモデルの提示」であった。基本属性と父親が専門職者に求める子育て支援ニーズでは,「19. 父親向けの産前教育」は,基本属性3項目(子どもの人数,子どもの年齢,父親教室や両親教室への参加の有無)で有意に求められていた。「7. 育児休業法,父親に対する地域の子育て支援などの情報提供」は,基本属性2項目(育児休業取得の有無,里帰り出産の有無)で有意に求められていた。自由記載は4カテゴリー(情報提供,公的な支援の拡充等)が抽出された。

    結 論

    支援ニーズの少ない下位3項目は,ピアサポートについての項目であったが,ピアサポートとして父親同士で話し合う場の提供は,父親の孤立を防ぎ,父親役割獲得を促すことにつながるため,父親からのニーズは低くとも必要な支援であると考える。父親への支援として,父親向けの産前教室の拡充,育児関連の情報が父親に直接届くような情報提供の工夫が必要であると考えられた。

  • 中島 久美子, 廣瀬 文乃, 綿貫 真歩, 吉野 めぐみ, 行田 智子
    2025 年39 巻2 号 p. 370-379
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    [早期公開] 公開日: 2025/08/08
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,助産師を対象とした夫婦の関係性支援プログラムの研修会を実施し,夫婦支援プログラムの活用の可能性を検討することである。

    対象と方法

    研究デザインは,量的研究と質的記述的研究を用いた混合研究である。対象者は全国の病産院・助産所の助産師とした。研修プログラムは,eラーニング動画とオンラインによる集合研修だった。調査内容は,eラーニング動画の確認テスト,受講前後の夫婦の関係性支援の理解と認識であり,研修会の意見,夫婦に向けた支援コンテンツの活用の希望と理由,夫婦関係のアセスメントツールの活用への期待と課題について自由記述で回答を得た。受講前後の比較はMann-Whitney U検定を行い,自由記述内容は質的帰納的分析を行った。

    結 果

    参加者51名のうち,32名が研修プログラム受講後に回答した。研修後の得点は,9項目中7項目が3.0点以上であり,夫婦支援に対する理解と認識が高かった。研修会に対する参加者の感想は,夫婦に対する助産支援の重要性を再認識した,夫婦に対する助産支援の具体的な方法を理解できたなど,肯定的な意見が多かった。しかし,COVID-19の制限による夫婦支援への困難を指摘する参加者もいた。また,8割以上が夫婦に向けた支援コンテンツの利用を希望しており,その理由として,子どもがいる生活への準備の機会などを挙げていた。夫婦関係のアセスメントツールは,個別・集団場面において夫婦の強みを高める助産支援が期待できるという意見が得られた。

    結 論

    本研究は,助産師を対象とした親への移行期の夫婦関係支援に関する研修プログラムの活用の可能性を示すものである。eラーニング動画とアセスメントツールの活用に関する集合研修の組み合わせは,助産師の夫婦関係支援に対する理解と実践を高める可能性を示している。今後の研究では,この研修プログラムが助産師の実践や夫婦関係に与える影響を探る必要がある。

  • 下田 佳奈, 片岡 弥恵子
    2025 年39 巻2 号 p. 380-391
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は,助産所における助産師のケアについて,web質問票を用いて産後の女性から量的・質的な評価を得ることを目的とした。

    対象と方法

    本研究は,無記名のweb質問票を用いた横断研究である。対象は,助産所(院内助産,無床助産所を含む)で出産した産後3~4日目の女性であった。承諾が得られた全国の96か所の助産所において,対象者に調査依頼した。調査内容は,出産および助産師のケアの満足度,助産師のケアの質についてa)根拠に基づいたケアの提供,b)安全性,c)女性を中心にしたケアの提供等の質問で構成した。質問項目の記述統計量を算出し,提供された助産師のケアと妊産婦の思いを自由記述してもらい,質的帰納的に分析した。

    結 果

    合計113名の妊産婦のうち約9割が,根拠に基づいたケアおよび女性を中心としたケアを受けたと認識していたことが明らかとなった。医療体制や設備についても,約9割の妊産婦が安全だと感じており,搬送時の説明なども受けていた。出産満足度と助産師の対応や支援に関する満足度は,平均98.2点と99.3点であった。提供された助産師のケアと妊産婦の思いとして,【妊産婦と家族への継続した伴走】【個々を尊重した多様なケア】【丁寧な対応による安心感】【育んだ助産師とのつながり】【これからも続いていく居場所】【主体的でポジティブな出産】の6つのカテゴリが抽出された。

    結 論

    助産所において出産した妊産婦は,根拠に基づいたケア,安全性の高いケアおよび女性を中心としたケアを受けたと認識していたことが明らかとなった。またそれらのケアを受けた結果,助産所での出産は多くの女性にとって非常に満足度の高い出産体験となっていた。妊娠期から継続的に尊重されるケアを受けることは,単にポジティブな出産体験で終わらない,育児に向けた長期的な支援として重要であることが示唆された。安全面では異常発生前に可能な範囲で異常や搬送についての説明を行い,妊産婦の不安の払拭と安心感の獲得に配慮が必要であると考えた。

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