論文ID: JJAM-2020-0042
目 的
本研究の目的は,復職を機に断乳を決意した女性の心理的プロセスを明らかにし,働く女性にとって望ましい母乳育児支援を探ることである。
対象と方法
WHOは生後6ヵ月までの完全母乳育児と2歳までの継続を勧告していることから,本研究では正期産かつ2500g以上の単胎を出産後,母乳育児を行っていたが,母乳育児継続期間が2年経たずして復職を機に断乳を決意した母親12名を対象に半構造化面接を行い,M-GTAを用いて分析した。
結 果
復職を機に断乳を決意した女性の心理的プロセスは,8つのカテゴリ,18の概念が抽出された。女性は,復職前は【復職後も授乳は継続したい】という思いを抱いていたが,復職後は〈夜の授乳の辛さ〉から,次第に【夜の授乳と仕事の両立への不安】を感じるようになっていった。そして,〈周囲の意見から断乳を意識する〉ようになり,今の〈授乳の必要性を検討〉しはじめ,【子どもの成長に伴う授乳への抵抗】が現れるようになっていった。しかし,いざ断乳を始めようとすると,【断乳することへの漠然とした不安】を抱き,〈断乳によって生じる苦痛〉を感じていた。また,〈本当は続けていきたかった授乳〉でもあったため,〈終わってしまう授乳への寂しさ〉を感じ,【授乳が終わることへの抵抗】を抱くこともあった。そのため,〈子どもに対する罪悪感〉から〈子どもからの欲求に思わず応えてしまう〉こともあり,【断乳を決意したことへの後ろめたさ】をも感じていた。葛藤状態を繰り返しながらも改めて【断乳への強い決意と覚悟】をした女性は,〈妥協はしないという強い決意〉をして断乳に臨んでいた。そして,断乳が完了すると,自分の中で【断乳という決断を受け入れ】ていた。
結 論
働く女性にとって望ましい母乳育児支援とは,授乳を継続するにしても断乳をするにしても,働く女性のもつ力を尊重し,女性が自ら母乳育児の方法を選択し,納得できるよう支援する関わりが重要であることが示唆された。