日本助産学会誌
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『ポジティブな出産体験のための分娩期ケア』と産科ケア満足度の関連:エルサルバドル国立女性病院における調査データの分析
岸野 桜子笹川 恵美米澤 かおり臼井 由利子三砂 ちづる春名 めぐみ
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論文ID: JJAM-2022-0011

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抄録

目 的

本研究の目的は『WHO推奨:ポジティブな出産体験のための分娩期ケア』の推奨項目を基準に,エルサルバドルの産科ケアの実施状況を明らかにし,ケアの実施の有無が,女性のケア満足度に差をもたらすかどうかを検討することである。

方 法

2021年5–6月にエルサルバドル国立女性病院に経腟分娩目的で入院した女性に対して実施した,(1)分娩時の直接観察調査と(2)産科ケア満足度調査の結果を用いた二次解析である。双方の調査に参加した女性を分析対象とし,WHOが推奨レベルを示すケア56項目中,22項目のケアの実施状況を示し,Care in Obstetrics: Measure for Testing Satisfaction(COMFORTS)尺度の点数との関連性をMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。

結 果

計44名の女性が対象となった。産科ケア満足度の合計点の中央値は200点満点中154点だった。産後多量出血のあった女性28名(63.6%)はCOMFORTS下位尺度の「分娩中に受けたケア」の満足度が有意に低く(p=0.046),また,産後に出血予防の子宮収縮薬が投与されなかった女性2名(4.5%)の産科ケア満足度は有意に低かった(p=0.042)。それ以外の項目と産科ケア満足度の間に有意差は見られなかった。なお,推奨するケアのうち,出血予防の子宮収縮薬投与,早期母子接触等のルーチン化されているケア実施率は高く,内診間隔や胎児心音聴取間隔は遵守されていなかった。クリステレル胎児圧出法や新生児の鼻腔口腔吸引等の推奨しないケアも観察された。

結 論

産後多量出血となった場合や分娩第3期に子宮収縮薬が投与されなかった場合に産科ケア満足度は低くなっており,女性は適切なケアを受けることができなかったと感じた可能性がある。WHOが推奨するケアが実施されない場合,女性のケア満足度は低くなることが示唆された。

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