日本助産学会誌
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無痛分娩を希望する妊婦に対する出産への主体性を引き出す助産ケアの実態 ―自然分娩との比較―
中本 咲鈴篠原 枝里子竹内 翔子中村 幸代
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論文ID: JJAM-2024-0052

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抄録

目 的

本研究の目的は,無痛分娩を希望する妊婦に対する出産への主体性を引き出す助産ケアについて実態を明らかにし,自然分娩との比較を通して無痛分娩を希望する妊婦に対する出産への主体性を引き出すために必要な助産ケアの示唆を得ることである。

対象と方法

首都圏の自然分娩と無痛分娩を取り扱う施設に勤務する助産師146名を対象とし,無記名自記式質問紙調査を実施した。対象者の選択基準は,現在妊婦健診の業務に携わっている,助産師としての経験年数が3年以上の助産師とした。主な分析方法は,妊婦の出産への主体性を引き出す助産ケアについて基本統計量を算出し,その後Mann-WhitneyのU検定にて変数間の差の検定を行った。本研究は横浜市立大学の倫理審査委員会での承認を得て実施した(承認番号:F230800034)。

結 果

質問紙調査の有効回答数は97名(回収率69.1%,有効回答率96.0%)であった。妊婦の出産への主体性を引き出す助産ケアとして実施率が高かった項目は「妊婦の頑張りを認める言葉かけを行う(自然分娩99.0%,無痛分娩96.9%)」,「健診時は必須の健診事項だけでなく,不安や疑問など妊婦自身の話を聞くことを大事にしている(自然分娩97.9%,無痛分娩98.9%)」,「妊婦の発言を認め,尊重している(自然分娩97.9%,無痛分娩96.9%)」であり,実施率が低かった項目は「他の妊婦との交流を促す(自然分娩28.9%,無痛分娩32.0%)」であった。また無痛分娩で出産予定の妊婦に対する出産への主体性を引き出す助産ケアに対する意識については,ほとんどの項目で「自然分娩と同様である」の回答が最も高い割合を占めた。無痛分娩での助産ケアの属性比較にて有意差があったのは,無痛分娩における出産への主体性を引き出す助産ケアに関する教育・研修等の受講の有無であった。

結 論

出産への主体性を引き出す妊娠期の助産ケアは自然分娩でも無痛分娩でも同様の意識の元,同様の主体性を引き出す助産ケアを行っていた。また,無痛分娩を希望する妊婦の出産への主体性を引き出す助産ケアについて,教育・研修等の受講の有無で助産ケア実施に有意差があったことから,助産師が教育・研修等を受けることが,無痛分娩を希望する妊婦の出産への主体性を引き出す助産ケアの実施につながると考えられた。

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