日本助産学会誌
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父親の分娩への没入行動の変化と助産婦の言語的かかわり
木村 千里松岡 恵
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1996 年 10 巻 1 号 p. 29-35

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抄録
夫立ち会い分娩において, 分娩進行に伴う夫の分娩への「没入行動」の変化, 夫の「没入行動」を引き出す助産婦の言語的かかわりを明らかにする目的で, 初産婦とその夫15組を対象として分娩第1期極期から分娩終了までのビデオ録画, ビデオ内容の分析を行った。
その結果, 父親の分娩への没入行動のうち, 愛情行動と集中反応の頻度は, 娩出期のほうが分娩第1期極期よりも有意に多くなっていた (p<0.01)。さらに, 陣痛に伴うかけ声と分娩に伴う現象を夫に知覚させるという助産婦の言語的かかわりの頻度は, 娩出期のほうが分娩第1期極期よりも有意に多くなっていた (P<0.01)。また, 娩出期の助産婦の陣痛に伴うかけ声の頻度と夫の産婦に対する身体的接触 (r=0.673, p<0.01) や「集中反応」の頻度 (r=0.551, p<0.05) との間に正の相関を認めた。さらに, 父親に分娩の現象をより知覚的に感覚させる言語的かかわりの頻度と, 夫の妻に対する凝視 (r=0.536, p<0.05) や「集中反応」の頻度 (r=0.922, p<0.01>)との間に正の相関を認めた。
これらの結果から, 夫に対する助産婦のlabor guideとしての役割が明らかになると同時に, 分娩中の夫の情緒的変化に関する記述的研究の必要性が示唆された。
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