日本助産学会誌
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損益分岐点分析による助産院経営の実態分析
宮崎 文子
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2002 年 16 巻 1 号 p. 35-47

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抄録

本研究の目的は, 助産院経営の3要素 (人・物・金) の中で, 主に金 (財務面) に焦点を合わせて, 助産院経営の実態分析からその特性を明らかにし, 具体的な経営の方向性を探る基礎資料を得ることにある。
調査対象は, 助産院を年間取扱分娩件数 (以下, 分娩件数) 別に無作為に抽出した6事例である。調査内容は, 財務関連内容14項目の聞き取り調査および過去の助産院の財務データを基にしたものである。分析方法としては損益分岐点分析の手法を用いた。調査期間は, 平成12年10月から12月である。
1。事例全体の費用の内訳をみると, 変動費比率が低く, 固定費の占める割合が高い。固定費では人件費の比率が高く, 次いでリース料, 賃借料, 減価償却費の順となっている。
2.収支内容については, 分娩件数が50件では院長報酬を500万円前後に抑えれば, 黒字を確保できるという結果を得た。
3.必要売上高と分娩件数・ベッド稼働率の関係では, 分娩件数が50件を超え60件前後では, ベッド数が3床のとき, 赤字にならないためのベッド稼働率が30-35%以上必要であり, 分娩件数90件近くになると, ベッド数4床のときベッド稼働率は37%, 5床のときは30%必要となる。さらに分娩件数130件では, ベッド数6床のときベッド稼動率は37%であることが示唆された。
以上より, 現在の助産院経営は, 売上高が順調に伸びていっているのではなく, 経営規模が小さいため生業的な性格が強く, 大きな経営問題を抱えるのは健全経営にとっての阻害要因となることが明らかとなった。助産院経営に当たっては, 通常の事業経営と同様の視点に立ち, あらかじめ経営計画を策定し, 収益性の確保を見込んだ上で実行すべきである。

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