2025 年 100 巻 1 号 p. 52-60
日本にはフウチョウゴケ属植物としてはフウチョウゴケ1種だけが産することが報告されており,Macrothamnium macrocarpum という学名が当てられてきた.しかしながら,立ち上がる二次茎の分枝パターンと茎葉・枝葉の特徴の再検討ならびに葉緑体にコードされた rps4 ならびに trnL-F に基づく分子系統解析の結果から,日本産の植物は高い支持率でM. submacrocarpum のクレードに含まれることがわかった.これまでの研究で M. macrocarpumは渓流沿いに,一方 M. submacrocarpum は林床に生育するという生態的棲み分けが見られることが指摘されているが,屋久島産フウチョウゴケは渓流沿いに生育が限定される.分布の北限にあたる屋久島において,M. submacrocarpum が二次的に渓流沿いに再侵入した可能性が推測される.