2025 年 100 巻 1 号 p. 3-17
野外調査から,世界の‘カワゴケソウ’植物相は以前の理解よりはるかに豊かであることがわかった.初期進化では系統分化に先立って大幅に変化した環境に適応し,その後多様化は比較的変異の少ない環境で起こった.各大陸には先住亜科と移入亜科が共存し,生物地理は重層的である.日本他の分布はおおむね火山活動と関連している.隔離集団からなる種の構造が側系統種を生みだした.高い突然変異率が発見されたが,紫外線が強い河川へ進出した結果であろう.遺伝子発現から見て,カワゴケソウ亜科の‘葉’や‘苞’は茎原基を含む統合器官である.分裂組織自体が欠失・変形して,根の欠失,分裂組織を欠く茎,器官構成の変更などが起こり,跳躍進化した.根の双方向変異は中立進化したと解釈される.水槽栽培に成功し,自生地との比較から,川の流れは有害な微生物などを排除し養分を供給すると推定される.