植物研究雑誌
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第100 巻記念論文
マメ科ヌスビトハギ連ウチワツナギ群の分子系統学的解析
大橋 一晶大橋 広好 根本 智行那谷 耕司
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2025 年 100 巻 2 号 p. 99-116

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抄録

ヌスビトハギ連 Desmodieae はヌスビトハギ群Desmodium group,ウチワツナギ群 Phyllodium group,ハギ群 Lespedeza group に分けられている (Ohashi 2005).Jabbour et al. (2018) はウチワツナギ群が側系統であると指摘したが,その分子系統樹にはまだ明確ではない点も含まれるため,本研究では解析データを充実させ,さらにこれまでに解明したヌスビトハギ群の系統関係とも関連づけたうえで,新たにウチワツナギ群の分子系統解析を検討した.その結果,ウチワツナギ群は核リボソーム DNA の系統樹では単系統であるが,葉緑体 DNA を用いた系統樹ではウチワツナギ群の Ougeinia がヌスビトハギ群の Ototropis と姉妹群となったため,ウチワツナギ群は,側系統と判断された.しかし,Ougeinia を除くウチワツナギ群 (Core Phyllodium group) は単系統となった.外部形態と花粉形態からは Ougeinia はウチワツナギ群,Ototropis はヌスビトハギ群に属することが示されている. これらの根拠から現状では Ougeinia はウチワツナギ群,Ototropis はヌスビトハギ群とみるのが妥当であると考えられる.したがって現段階ではウチワツナギ群はまとまったグループと認めておく.タデハギ属 TadehagiAkschindliumDroogmansiaは単葉で葉柄に翼のあることを共通の形態的特徴としていたが,分子系統解析の結果により単系統群であることが明らかとなった.ミソナオシ属 Ohwia は既に Jabbour et al. (2018) が明らかにしたごとく,ニューカレドニア固有の ArthroclianthusNephrodesmus およびフィリピン・インドネシア・オーストラリア東北部などに分布する Hanslia と近縁であることを再確認した.また,ウチワツナギ属とナハキハギ属 Dendrolobium は形態的に近縁な別属とされている.しかし,葉緑体 DNA 解析結果に基づく系統樹では両属は姉妹群となったが,核リボソーム DNA解析結果に基づく系統樹では形態上の近縁関係と一致せず,ナハキハギ属はミソナオシ属,ArthroclianthusNephrodesmus を含むグループと姉妹群となり,これとウチワツナギ属が姉妹群となった.オーストラリア固有種Dendrolobium multiflorum Pedley はナハキハギ属として記載されたが,葉緑体 DNA および核リボソーム DNAの系統解析の結果,ウチワツナギ属と単系統群であることが明らかとなったためウチワツナギ属に組み替えた.

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