2025 年 100 巻 3 号 p. 248-255
北海道有珠山でタカネハナワラビ Botrychium boreale MildeとミヤマハナワラビB. lanceolatum (Gmel.) Ångstr.の集団を発見した.タカネハナワラビは,国内では有珠山でのみ生育が報告され,1977年の噴火により生育地が消失・絶滅したとされてきたため,約半世紀ぶりの再発見となった.ミヤマハナワラビは,環境省レッドリストで絶滅危惧種IA類に指定されている希少種であり,今回の発見は道内3例目にあたり,最も近い既知産地から400 km以上も離れている.また,北海道では近年の採集例や目撃例がなく,現存する集団としても貴重である.発見した2種の集団は隣接していたが,ほとんどの個体が種ごとにパッチを形成しており,混生はしていなかった.標高や植生などの文献や標本の採集情報から,今回発見されたタカネハナワラビの集団の位置は,噴火によって消失した集団のものとは異なっていたと推定される.発見した集団はいずれも個体数が少なく,有珠山の噴火により生育地が消失する危険性を常に孕んでいるため,保全活動や系統保存が危急的に必要である.