植物研究雑誌
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マメ科ソラマメ連植物の花柱の外部形態と内部構造
遠藤泰彦大橋広好
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1997 年 72 巻 1 号 p. 9-18

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抄録

マメ科ソラマメ連に属するレンリソウ属,レンズマメ属,エンドウマメ属,ソラマメ属植物37種61個体について,花柱の外部形態および内部構造を観察し,各形質について解析を行った.この結果に基づき,ソラマメ連植物の系統関係について議論した.

 ソラマメ連植物の花柱は,花柱有毛部の横断面の形態により,以下の8タイプが識別できた(花柱の向軸面を下方に配置して記載する):1,円形;2,背腹方向に偏平な楕円形;3,左右方向に偏平な楕円形;4,逆三角形;5,三角形の左右両端が伸びた形;6,背腹方向に偏平な楕円形の左右両端が伸びた形;7,弓形(弦部が向軸側に位置する)の左右両端が伸びた形;8,左右両端が背軸面で接するV字形.これらのタイプの関係を外群比較法に基づいて考察すると,円形が原始的な形質状態にあり,他は派生的な状態にあると考えられた.これらの中で,タイプ4を持つ種群はすべてソラマメ属に所属し,花柱上の毛が背軸面で束状にはえるという共通の特徴を持つ.さらに,本研究の結果から,この種群は以下の2つの特徴を持つことが明らかとなった:1,花柱溝が著しく向軸側に寄っている;2,花柱が有毛部で肥厚する.これら特徴は,花柱溝が花柱のほぼ中央を走る場合,そして,花柱が基部から先端に向かいしだいに細くなる場合に対し,外群比較法により,それぞれ派生的であると考えられた.これらの派生形質を共有することから,花柱タイプ4の種群は,ソラマメ連内で単系統であると推定された.しかし,既存の分類体系では,この種群は多系統であると考えられ,ソラマメ属内で2亜属に分割されている.このため,ソラマメ属の属内の分類体系の再構築が必要であると考えられる.

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© 1997 植物研究雑誌編集委員会
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