シロバナトウウチソウは,東北地方の亜高山帯に生える日本固有種である.これまで本種の染色体数については,2n=56と2n=54の報告があったが,採集地あるいは調査個体数が十分に示されていなかった.本研究では,シロバナトウウチソウの染色体数を,16集団70個体について調査した.その結果,13集団59個体の植物は2n=56の8倍体であった.一方,高松岳,神室山(いずれも秋田県)の2集団,計9個体の植物は,2n=84の12倍体であった.ほとんどの集団からは一方の倍数体のみが得られたが,唯一月山では,1520m 地点から12倍体,1800m 地点から8倍体が得られた.本研究の結果,本種は8倍体,12倍体から構成されることが明らかになった.神室山からは異数体(2n=85)も1個体えられたが,2n=54や2n=85のような異数体はまれであり,偶発的に生じるものであると思われる