1994年に昆明植物研究所のハーバリウムでヌスビトハギ属植物の標本を調べたところ,1新種と思われる花期に採集された標本を2枚発見した.これらの標本に基づいて,Desmodium luteolum H. Ohashi & T. Nemoto を命名・記載した.この新種は,葉柄に狭い翼のあること,側萼裂片と最下の萼裂片は同長であること,花はうすい黄色であり,旗弁舷部の基部は心形,翼弁は龍骨弁よりも短いこと,花内蜜腺をもつこと,などの特徴で,ミソナオシに類似するが,小葉は鈍頭であり,花序には1節に5-7花がつくこと,花が大きく(本種では約9mm あるが,ミソナオシでは7-8mm),翼弁に耳状の突起があることなどで区別できる.また,旗弁側の1本の雄しべの基部両側に龍骨弁側の雄しべとの間にできた小形の隙間がある.この構造は訪花昆虫を花内蜜腺に到達させるための誘因装置と考えられ,ナツフジ連(Geesink 1981, 1984),ハギ属(Nemoto et al. 1995),ヤハズソウ属(Nemoto et al. 1995)では既に記録されているが,ヌスビトハギ属では初めての報告である.Ohashi(1995)は最近中国のヌスビトハギ属とその近縁種のリストを発表したが,その分類体系によれば本種は中国のヌスビトハギ属植物の中で37番目の種でかつ7番目の固有種であることになる.