植物研究雑誌
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大阪府における普通植物の分布
金井弘夫
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1999 年 74 巻 2 号 p. 105-123

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抄録

1995,1996年に地域在住研究者の協力を得て行った.手法については従来と同じであるので,金井(1993,1995)および表1を参照されたい.分布情報を提供していただいた天野史郎氏,植村修二氏,梅原 徹氏,佐木山祝一氏,清水千尋氏,豊原 稔氏,西川一郎氏,平野弘二氏,藤井伸二氏,山住一郎氏に感謝する.また協力者の紹介をいただいた瀬戸 剛氏に謝意を表する.

 分布情報の数は総計3188件であった.本報では表示メッシュを5倍メッシュ(2.5万図の1/4)とする.この場合県の全メッシュ数は96である.本調査では有効メッシュ(なんらかの情報が得られたメッシュ)は80(図1),有効メッシュ率は83%である.この値はこれ迄の他県の結果と比較して,非常によく調査が行われたことを意味する.情報の年代は1990年代が2888件,1980年代が269件,1970年代が26件,1960年代が5件で,年代による分布の比較を行えるほどではなかったので,一括して扱った.

 全般に,大阪市街から京都方向にかけて,産地の少ない種類が多い.本調査はメッシュを設定して全数調査を行う方法はとっていないので,都市化のために調査対象となりにくいためと思われる.それにしても,ゲンノショウコ(図7A)やタケニグサ(図9B)の産量が少ないのは,普通さの程度が下がって来ているためではないだろうか.

 オオイタドリ(図3B)は高槻市地獄谷と岸和田市葛城山の二ケ所で記録された.葛城山では林道沿いの新設された駐車場に生じていた.この植物は工事に伴って本来の分布範囲から逸出繁茂する例が,ときどき見られる.

 ノブキ(図14B)の河内平野の分布点(和泉市阪本町・矢印)は,他の産地と離れているうえ高度も低いので,再確認をお願いした.しかしながら1998年5月の時点では,この地点は前年の国民体育大会の関連工事のため開発されて景観が変わり,再確認はできなかった.1996年10月27日の調査当時はノブキであることを確認しているとのことで,分布点を残してある.こういう何の変哲もない植物が,知られることなく消失する実例をはからずも記録したことは,普通植物分布調査の意義を認識させるものである

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© 1999 植物研究雑誌編集委員会
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