植物研究雑誌
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アジア産トリカブト属(キンポウゲ科)の分類学的研究Ⅶ. 北海道産レイジンソウ亜属の1新種と1新品種
門田裕一
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2001 年 76 巻 1 号 p. 20-27

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抄録

北海道産のレイジンソウ亜属の 1 新種と 1 新品種を記載した. マシケレイジンソウ Aconitum mashikense Kadota & Umezawa は北海道中央部日本海側に位置する増毛山地と樺戸山系の固有種である. マシケレイジンソウはオオレイジンソウに似ているが,花梗に粗面開出毛がはえ, 小苞が花梗の基部近くに着くことで区別される. 北朝鮮からロシア沿海地方南部にかけて分布するフセンキエボシソウ A. puchonroenicum Uyeki & Sakata は黄色い花を咲かせ, 花梗に開出毛があるので一見マシケレイジンソウに似ている.しかし, この両者は上萼片の形において明瞭に異なっている. すなわち, マシケレイジンソウでは円筒形であるのに対して, フセンキエボシソウでは背の高い円錐形で頂部が次第に細くなる.またフセンキエボシソウの花梗にはえる開出毛は滑面開出毛であり, マシケレイジンソウの粗面開出毛とは異なる. さらに, フセンキエボシソウの花梗には多少とも滑面の腺毛が混在する.東アジアでは, 一般に, 花梗に開出毛がはえる種は滑面開出毛と滑面腺毛の双方をもつ. 一方, 大ヒマラヤ地域にはこれに加えて花梗に粗面開出毛のみをもつ一群の種がレイジンソウ亜属にもトリカブト亜属にもある.マシケレイジンソウは花梗に粗面開出毛のみをもつ東アジアにおけるこれまでのところ唯一の種である.

 オオレイジンソウの 1 新品種としてハゴロモレイジンソウ A. gigas H.Lev. & Vaniot f. bicolor Kadota & Umezawa を記載した. オオレイジンソウは花の色が安定して淡黄色であるが,これは花全体が淡いピンクで, 上萼片の嘴周辺と側萼片と下萼片の先端部が濃い紫色となっていてたいへん美しい.

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