2016 年 91 巻 suppl 号 p. 326-329
Rumphia は,Linnaeus が『植物種誌』(1753 年)の補遺(1190–1199 ページ)部分で,Van Rheede のHortus Malabaricus 4 巻,図11 に載るTsjem-tani にもとづいて発表した属名である.Rumphia の正体を巡っては種々解釈されてきたものの,どれも大方の支持は得られず,植物学史上も重要な上記著作中,唯一正体不明のまま今日にいたった植物であった.今回,その正体は,旧熱帯の重要な木本属であるカナリウム属(カンラン科)のCanarium strictum Roxb. であるとする新見解を述べた.なお,この見解が支持を得れば,Canarium はRumphiaの後続異名となるため,属名Canarium をRumphia に
対して保存名とするための提案が残される.実用性を度外視し,時間上の優先順位のみで,Canarium の現在認められる約77 種をRumphia のもとに移して新組合せを作ることは受け入れがたい.