植物研究雑誌
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南西諸島産カラタチゴケ属の 2 新種
柏谷博之文 光喜
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2017 年 92 巻 1 号 p. 27-33

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抄録

 南西諸島からリュウキュウカラタチゴケ(新称)Ramalina ryukyuensis Kashiw. & K. H. Moon と ヨコタカラタチゴケ(新称)R. yokotae Kashiw. & K. H. Moon の2 新種を記載した.

 リュウキュウカラタチゴケは海岸のトゲイボタやクロイゲなどの灌木に着生するほか,希にコウライシバのほふく茎にも着生する.地衣体は樹枝状.枝は基部から先端部まで同長二叉分枝を繰り返し,中実で粉芽はないが,表面に楕円形~長円形のやや盛り上がった偽盃点をつける.皮層下の軟骨組織は表面では不連続,裏面ではほぼ連続し,菌束糸に分裂することは少なく,希に不明瞭な亀裂を生じる.子器は希,分枝の側面に生じる.子器柄はくびれる,距はなく,盤は平坦または少し中凸.胞子は無色,2 室,10–13 × 32.3–2.5 μm.地衣成分はノルスチクチン酸を含むもの(Race 1) とセッカ酸を含むもの(Race 2) の二つの種内化学変異が見られる.本種は基部から分枝の先端近くまで同長二叉分枝を繰り返す地衣体を持つ.このような特性を持つ種はカラタチゴケ属では報告されていないので,他種とは容易に区別できる.本種は奄美諸島,沖縄諸島,先島諸島の極めて限られた地域に生育する希種である.

 ヨコタカラタチゴケはコウライシバのほふく茎に着生する.枝が同長二叉分枝を繰り返す地衣体を持つ点では上記のリュウキュウカラタチゴケに似ているが,本種の枝は中空で穿孔があり,偽盃点を欠くので容易に区別ができる.地衣成分はノルスチクチン酸とセッカ酸である.本種はこれまでに徳之島の二カ所で生育が確認されているだけで,南西諸島を含む日本の他の地域からは見つかっていない.種小名のyokotae は本種を発見された琉球大学の横田昌嗣博士への献名である.

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