植物研究雑誌
Online ISSN : 2436-6730
Print ISSN : 0022-2062
ISSN-L : 0022-2062
シコタンタンポポ(キク科)の倍数性と核DNA量
高野 昭人 中野 美央船本 常男高橋 薫子山之内 裕子篠崎 淳一井上 政史森田 竜義
著者情報
ジャーナル 認証あり

2023 年 98 巻 1 号 p. 19-28

詳細
抄録

多様な倍数性をもつシコタンタンポポTaraxacum shikotanense( キク科)の各倍数体の出現頻度を検証する目的で,北海道の13地点で採集した292個体について,フローサイトメトリー (FCM) を用いて核DNA量 (2C) を測定した.染色体数で倍数性を確認した八倍体 (2n=64) 11個体(7地点で採集)のモノプロイドゲノムサイズ (1Cx) は1.14–1.22 pg で,九倍体 (2n=72) 5 個体(2 地点で採集)のモノプロイドゲノムサイズ (1.13–1.17 pg) とほぼ同じであった.このモノプロイドゲノムサイズ (1.13–1.22 pg) を用いて,各倍数体が示す核DNA量の推定値を計算し,この値とFCMの測定値から各個体の倍数性を推定した.その結果,292個体の62.7% は八倍体であると推測され,六倍体,七倍体,九倍体および十倍体と推定された個体の頻度は低かった.シコタンタンポポのモノプロイドゲノムサイズは,日本産二倍体種 (1.41–1.59 pg) よりも有意に小さく,シコタンタンポポはゲノムサイズが小さい未知の祖先種から生じたか,あるいは,倍数性レベルが増加するにつれて核DNA量の減少が起こったのではないかと推察した.

著者関連情報
© 2023 植物研究雑誌編集委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top