植物研究雑誌
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トウカイスミレ,日本産スミレ属の1 新種(スミレ科)
山田 直樹いがり まさし
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2023 年 98 巻 2 号 p. 61-70

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抄録

新種トウカイスミレViola tokaiensis Sugim. ex N.Yamada & Igari を記載した.本種は本州茨城県以西,四国,九州および韓国済州島に分布するヒメ ミヤマスミレV. boissieuana Makino (= V. sieboldii Maxim. subsp. boissieuana (Makino) F.Maek. & T.Hashim.) と混同され,その東海型として扱われることもあったが,葉が幅広く常に有毛であり,花弁が脈以外も淡紅紫色を帯び,唇弁が他の花弁とほぼ同長で,花柱が単純な円柱形で側面が張り出 さず,萼の付属体が大きくしばしば2 裂する点で明らかに区別できる.生態的にも,ブナ帯の林床に生育して,花は春に葉と同時に展開し,ヒメミヤマスミレと同じ地域に生育する愛知県東部ではトウカイスミレの方が1週間ないし10日ほど遅く開花する.葉の形質や生育環境では広域分布種のミヤマスミレV. selkirkii Pursh ex Goldieに似た点があるが,花弁や花柱の形質ではこれとは明らかに区別され,分布も重ならない.本種は杉本順一 (1962) によって命名され,V. tokaiensis Sugim. の裸名のままいくつかの植物誌や図鑑に掲載されてきたものであるが,今回の記載にあたって新たにタイプを指定した上で,杉本の和名と学名の形容語を生かす形で新種として記載する.

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