植物研究雑誌
Online ISSN : 2436-6730
Print ISSN : 0022-2062
ISSN-L : 0022-2062
本邦湧水からの淡水産付着藍藻の1新種,イズミフクロノリ Chamaesiphon bursiformis
福岡 将之 北野 瑞生鈴木 秀和神谷 充伸田中 次郎
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 99 巻 1 号 p. 25-37

詳細
抄録

北海道,東北および中部地方の湧水地から,付着藍藻の1新種,イズミフクロノリ(新称)Chamaesiphon bursiformis M.Fukuoka, Kitano & Hidek.Suzukiを記載した.本研究は,本種の特徴を形態観察と分子系統解析により明らかにした.本種は,分厚い粘質鞘に包まれた多数の細胞が平行や放射状に配列する,嚢状の藻塊を形成するという形態学的特徴を有する.本種と同属他種の16S rRNA遺伝子や16S-23S rRNA ITS領域の遺伝的距離は,先行研究での種間の差を示す閾値を上回っていた. 本種のITS領域の二次構造は,同属他種にない固有の構造が見られた.これらの点で,本新種はChamaesiphonの他種と明確に区別できた.本種は,特に鳥海山等の成層火山の麓に位置する低温の湧水地に産する.各産地の試料間の形態に統計的に有意な差は認められず,遺伝的な差も見出されなかった.

著者関連情報
© 植物研究雑誌編集委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top