2026 年 26 巻 1 号 p. 101-113
本稿は、1950年代以降フランスのアニメーション・シーンで活動した批評家アンドレ・マルタン(1925-1994)に着目し、彼の映像観を批評実践と映画祭運営の両面から検討するものである。マルタンが思想的概念として積極的に用いた「アニメーション映画(cinéma d’animation)」という語の意義を再検討し、先行研究で示されたマルタンの「アニメーションの理念」を、彼の作品批評の分析を通じて具体的な実践の水準で理解する。この理念は、マルタン自身によって体系的に定式化された概念ではなく、彼の批評の中に断片的に現れる枠組みである。したがって、この理念には複数の理論的接続の可能性が潜在しており、その射程は発展的余地を残している。本稿では、マルタンがアニメーション映画の兆しとして評価した1955年前後の国営スタジオ作品への批評を中心に分析し、他の映画理論との照応を通して「アニメーションの理念」を発展的に再構成することで、その理論的可能性を明らかにする。