南アジア研究
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論文
英系インド商会の貿易と商業ネットワーク
―横浜の居留地貿易の事例から―
寺本 羽衣
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2016 年 2016 巻 28 号 p. 34-65

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抄録

本稿は、明治前期の商工録と貿易取引の分析から、居留地貿易中に横浜の英系インド商会が「英国」商会のような一次産品の輸出・工業製品の輸入に携わらず、隙間貿易(薬種の輸入・「Japanese Curios」の香港・ボンベイ輸出)から新軽工業品(絹織物、マッチ)の対印貿易に先鞭をつけ、日印貿易にて強固な地位を確立する端緒を掴んだことを提示する。これらの商会は中小規模のムスリム、パールシー、シンディー商会で、まず東インド会社の関連会社として参入し、次第にボンベイやハイデラバードを商業拠点とするアジアの支店網の一部として横浜に支店を開設していった。欧米商会、中国商会、日本商会と競合しながら貿易に参入し得た背景には、アジア域内の主要貿易港間に広がる、英系インド商会の緊密な自商会・代理店の商業ネットワークがあった。居留地貿易以後に急増する英系インド商会の基本的な貿易構造を、この時期に移入したシンディー商会にみることができる。

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© 2016 日本南アジア学会
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