南アジア研究
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論文
バングラデシュ村落社会におけるヒンドゥー・ムスリム間関係の変容
―ショマージと青年組合の活動に着目して―
杉江 あい
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2016 年 2016 巻 28 号 p. 7-33

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抄録

本稿は、従来個別に扱われてきたバングラデシュのヒンドゥーとムスリムを同一の村落社会空間を共有する主体として捉えなおし、20世紀初頭以降、両者間の関係がいかに構築されてきたのかを、両者が社会的な活動を共同する場であるショマージと青年組合に着目して検討する。事例村では、政治的・社会的な変動に伴うヒンドゥー人口の流出とムスリムの居住空間の拡大により、両者間の物理的・社会的な距離が縮小していった一方で、ヒンドゥーはマイノリティとしての立場を強め、ムスリムがヒンドゥーのショマージの紛争解決や宗教行事に介入することが増えていった。青年組合では、60年以上ヒンドゥーとムスリムが共同してレクリエーション等を実施してきたが、活動の主体や対象は実質的にムスリムに限られるようになり、ヒンドゥーによる参加は形式的なものになっていた。しかし、青年組合はヒンドゥーが村のショマージの一部であることを示す役割を持っていた。

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© 2016 日本南アジア学会
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