2023 年 7 巻 1 号 p. 26-32
高齢者ではanorexia of aging(加齢に伴う食欲不振)を生じやすい。食欲低下は体重減少の前に現れることが多く,体重減少は死亡の予測因子であるので,体重減少を生じていなくても食欲低下のある者では,ない者に比べ死亡リスクが45%高くなることが示されており,早期予防が必要である。また,加齢に伴いエネルギー必要量が減少する一方,微量栄養素の必要量は大きく変わらないとされており,エネルギー摂取量が低い者ほど栄養素密度の高い食事が求められる。近年,タンパク質の摂取タイミングにも注目が集まり,効率的な筋合成には朝食でも昼・夕食と同等量のタンパク質摂取が推奨されている。一方,朝食は1日の摂取量に占める割合が最も少ない食事である。タンパク質の生物価はアミノ酸バランスに左右されることに着目したわれわれの研究から,タンパク質の生物価の高い朝食習慣が筋力低下予防に寄与する可能性が見いだされた。「質」に注目した支援が重要と考えられる。