悪液質は,がんや慢性疾患に伴う体重と骨格筋の減少を特徴とし,患者の身体機能,生活の質(QOL),生命予後に深刻な影響をおよぼす。運動療法は,体重・骨格筋の増加,身体機能の改善,およびQOLの向上を目的に実施され,これまでの研究において主に有酸素運動やレジスタンストレーニングが実施されてきた。しかし,慢性疾患が進行した脆弱な悪液質患者において,運動療法の内容や効果を検証することは容易ではなく,運動療法の詳細な強度や頻度の知識,エビデンスについては十分に蓄積されていないのが現状である。本稿では,悪液質の定義・診断基準・臨床症状,運動療法における評価方法や介入方法について,現在渉猟しうる情報とともに概説する。臨床実践においては,早期に悪液質の評価・介入を開始し,患者の状態を勘案したアプローチが求められる。さらに,今後求められる研究の方向性についても触れ,悪液質における運動療法がまだ発展途上の領域であることを強調したい。