2012 年 21 巻 3 号 p. 183-203
要旨:通常,企業の業務で活用される企業情報システムの運用段階は10年以上の長期に及ぶ.その間,システムの設計,開発,および導入段階では想定されていなかった種々の環境変化へ対応するために,多様な保守が数多く実施されている.しかしながら,保守は後ろ向きであり,費用の掛かる作業とされ,これまでに保守が積極的に検証されることは少なく,保守に対する関心は高いとはいえない.本研究はある大企業が情報子会社に開発を委託し,運用・管理させている主要業務に関する受託開発の大規模情報システムを対象とし,2009年度に実施された保守作業に関する事例調査に基づき,実施された個々の保守作業を「作業内容」および「発生要因」の二つの視点から分類し,各分類での保守作業の件数および工数から保守の傾向を明らかにする.さらに,それらの傾向より調査対象システムの特性を考察する.また,これらの考察を通じ保守が一過的,限定的な作業として行われる傾向が強い背景や要因についても検討を加える.