日本外傷学会雑誌
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症例報告
墜落外傷による左心房破裂の1救命例
宮国 泰彦山田 賢治守永 広征大田原 正幸加藤 聡一郎庄司 高裕海田 賢彦玉田 尚宮内 洋樽井 武彦稲葉 雄亮土屋 博司窪田 博山口 芳裕
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2017 年 31 巻 1 号 p. 36-40

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抄録

 40歳代女性が建物3階から墜落して受傷し,ショック状態で当救命救急センターに搬送された.前胸部中央に打撲痕があり,FAST(focused assessment with sonography for trauma)は左胸腔内のみ陽性で,造影CT検査にて多発顔面骨骨折,縦隔気腫,左血気胸・肺挫傷,肝損傷,左恥坐骨骨折が認められた.左右の肝動脈と両側外頸動脈からの血管外漏出に対し経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)を施行後,留置した左側胸腔ドレーンからの出血が増大したため,緊急左側方開胸術を行った.肺挫傷に対し肺部分切除術を施行後,心膜損傷を伴う稀な左心房天井部破裂を確認した.自己心膜パッチを用いて心膜横洞を閉鎖空間にし,外科用接着剤を充填することで損傷部を被覆し止血を得て救命に至った.経過は良好で,術後61日目に転院した.本例に用いた方法は,人工心肺使用困難例における治療の選択肢として有用と考えられた.

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© 2017 一般社団法人 日本外傷学会
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