2018 年 32 巻 1 号 p. 14-19
症例1 : 63歳男性, 転落外傷症例. 来院時にショックバイタルでFAST陽性であったため緊急開腹止血術が施行された. バイタルの安定後に胸腹部CTを施行し胸部大動脈と腎動脈の損傷を認めた. 腎動脈のTAE後に大動脈ステントグラフト内挿術を施行した. 術後に大きな合併症なく退院となった. 症例2 : 68歳男性, 交通外傷症例. 胸腹部CTで腹腔内の遊離ガス像と液体貯留, 左外腸骨動脈の閉塞, 胸部大動脈損傷を認めた. 下肢の動脈バイパス術後に開腹術で止血術と消化管・動脈修復術を行った. その後に大動脈ステントグラフト内挿術を施行した. 術後に下肢の虚血再還流障害が生じたが後遺症なく退院となった. 外傷性胸部大動脈損傷は, 腹部臓器損傷も生じることが多くdecision makingが重要である. 胸部大動脈損傷に対するステントグラフト内挿術は, 多発外傷症例に対する低侵襲かつ有効な術式と考えた.