2018 年 32 巻 3 号 p. 403-406
症例は80歳男性. 高さ2mの脚立から転落して受傷し当院に救急搬送された. 頭部単純CTでは外傷性変化なく, 胸腹部単純CTで胸腰椎圧迫骨折と多発肋骨骨折を認めたため入院とした. 来院3時間後より急激に意識および呼吸状態が悪化した. 胸部レントゲンで浸潤影, 頭部MRIでDWI高信号の散在, 血液内の脂肪滴を認めたことから, 脂肪塞栓症と診断した. 人工呼吸器管理やステロイド投与を含めた全身管理により状態は改善し, 第49病日に転院となった. 脂肪塞栓症の多くは長管骨や骨盤骨折に伴って報告される一方, まれではあるが脊椎圧迫骨折や非骨傷性の鈍的外傷でも生じる場合があり, 外傷診療の際は留意すべきである.