2019 年 33 巻 2 号 p. 35-44
ドクターカー, ドクターヘリによる病院前外傷診療が日本全国で展開されている. かつて腹部外傷手術戦略として提唱されたdamage control は, 病院前, 初期診療, 手術, 集中治療を包括する重症外傷治療における基本的な概念に発展し, damage control ground zeroという病院前外傷診療の新しいパラダイムが誕生した. damage control resuscitationを病院前に導入し, 出血の迅速な制御, 気道管理, permissive hypotension, hemostatic resuscitation, 低体温の回避などを含む高度な病院前外傷診療を実践するためには, 病院内と異なる戦略が必要となる. 病院前におけるdamage controlは外傷蘇生の一部であり, 最低限の侵襲と時間で患者の状態悪化を防ぎ, 病院到着後のdefinitive therapyにつなげるものである.