2020 年 34 巻 3 号 p. 85-91
目的 : 受傷直後のextracorporeal membrane oxygenation (ECMO) 使用の適応, 安全性と効果を検討する. 方法 : 当施設で10年間に診療した外傷症例で受傷当日にECMOを使用した症例を診療録で後方視的に調査した. 結果 : 全4例, すべて男性. 年齢中央値は28.5歳, Injury Severity Scoreおよび予測生存率中央値はそれぞれ41, 0.734であった. 鈍的外傷3例, 鋭的外傷1例. 適応は重症胸部外傷に伴う両肺からの気道出血および呼吸不全が3例, 心損傷に合併した低体温症と難治性心室細動が1例. 受傷からECMO導入までの中央値は3時間. Venovenous-ECMO2例, venoarterial-ECMO2例. 全例で導入時の抗凝固療法はなし. 全例でECMO導入直後にアシドーシスの改善を認め, 低体温症例では速やかな体温上昇を認めた. ECMOに直接起因する合併症はなく, 2例が生存した. 結論 : ECMOは抗凝固療法なしで導入可能であり, 死の3徴のアシドーシスを改善し, 低体温を是正する可能性がある. 受傷直後のECMO使用は重症胸部外傷に伴う気道出血・呼吸不全や重度の循環不全に対する治療オプションとなりうる.