2020 年 34 巻 3 号 p. 96-100
門脈気腫および腸管気腫はまれではあるが重篤な所見と考えられ, 腸管壊死はその最も多い原因である. 外傷を契機とし, これらの所見を認める症例は報告されているが, 治療中, 遅発性に発生した症例はみられないため報告する. 症例は70歳代男性, 交通事故にて受傷し, 現着時, 意識障害とショックのため当救命センターに搬送された. 重症頭部外傷を認め保存的加療を行っていたが, 第4病日にショックを来し, CTにて門脈気腫および腸管気腫を認めた. 腸管壊死による敗血症性ショックを疑い, 試験開腹術を施行したが壊死を認めなかった. 術後, 抗生剤投与と血液浄化法により全身状態は改善し, 下腿骨骨折の手術後, 第41病日にリハビリ目的に転院となった.