日本外傷学会雑誌
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総説
ターニケット再考 : 歴史に是非を問う
金子 直之柚木 良介瀧 りえ中込 圭一郎
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2023 年 37 巻 2 号 p. 46-59

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抄録

 ターニケット (TQ) は古代から止血に用いられてきたが, その是非は戦傷医学で戦争ごとに紆余曲折してきた経緯がある. ある時は「魔王の発明」と呼ばれ, ある時は命を救うといわれたが, 常に「最後の切り札」という警告が付いていた. ところがアフガニスタン・イラク戦争で大きな変化が生じた. これらの戦争で負傷兵の治療に幾つかの至要たる改良がなされ, 救命率と救肢率の劇的な向上につながった. なかでもTQは最も重要な要素である. そして戦時の改革を市民レベルの救急医療に導入した点が重大な変化である. 現在, TQは市民レベルの外傷診療において世界中で適用される. 一方, 本邦では東京オリンピック前の2018年に「テロ災害等の対応力向上としての止血に関する教育テキスト」が出されたが, 救急隊による病院前のTQ使用に反対意見が少なくない. 本論文では古代から現状に至るTQの歴史を振り返り, その重要性と本邦で検討すべき課題を明らかにする.

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© 2023 一般社団法人 日本外傷学会
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