日本外傷学会雑誌
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37 巻, 2 号
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総説
  • 金子 直之, 柚木 良介, 中込 圭一郎
    原稿種別: 総説
    2023 年 37 巻 2 号 p. 21-32
    発行日: 2023/05/01
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

     多発肋骨骨折 (MRF) は若年者から高齢者まで頻発する外傷で, 骨折本数と形態が生命と合併症に影響し, 生活の質にも影響する重大な健康ハザードである. MRFに対する手術治療 (SSRF) は過去約100年間, 散発的に議論されたが, 非手術的治療が推奨されてきた. しかし21世紀に入り画像検査と手術器具の発達に伴い, SSRFの有用性を強調する論文が急増している. 今回, 過去20年間にSSRFを行った自験62例 (66胸郭) を10年ずつ2期に分け (16 : 46例), 短期治療成績を比較検討した. 後期では, より幅広い年齢に手術を行い (p=0.022), 固定数に差はないが (p=0.839), より早期に手術を行い (p=0.028), 術中出血量減少 (p<0.001) と, 早期呼吸器離脱 (p=0.042) ・胸腔ドレーン抜去 (p=0.004) を果たせていた. 本論文では併せてSSRFの利点・欠点について文献的考察を加えて報告する.

  • 金子 直之, 中込 圭一郎, 柚木 良介
    原稿種別: 総説
    2023 年 37 巻 2 号 p. 33-45
    発行日: 2023/05/01
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

     海外では近年, 肋骨骨折の手術治療の報告が増えているが, 本邦では普及していない. これには手術法に関する報告が本邦にないことが最大の原因と考える. 今回我々は自験81例 (87胸郭) の経験から, 術前計画と手術法の変遷, 現在の方法と注意点を紹介し, 文献的考察を加えて検討する. 術前計画では骨折の部位・本数・形態から固定肋骨を判断し, 皮膚切開と筋温存のためのアプローチをデザインすることが重要で, 通常のCTと3DCTのほか, volume rendering画像と, 手術室での超音波検査が有用である. 固定の判断には転位の有無が重要である. 現在日本ではスクリュー固定プレートと把持式プレート, 髄内スプリントが使用でき, 我々は骨折の部位と形態により使い分け, 特に肋軟骨には柔軟性を保つように把持式を用いている. それぞれ使用部位と使用法に注意点がある. 効果的な胸腔ドレナージと皮下ドレナージについても工夫をしている.

  • 金子 直之, 柚木 良介, 瀧 りえ, 中込 圭一郎
    原稿種別: 総説
    2023 年 37 巻 2 号 p. 46-59
    発行日: 2023/05/01
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

     ターニケット (TQ) は古代から止血に用いられてきたが, その是非は戦傷医学で戦争ごとに紆余曲折してきた経緯がある. ある時は「魔王の発明」と呼ばれ, ある時は命を救うといわれたが, 常に「最後の切り札」という警告が付いていた. ところがアフガニスタン・イラク戦争で大きな変化が生じた. これらの戦争で負傷兵の治療に幾つかの至要たる改良がなされ, 救命率と救肢率の劇的な向上につながった. なかでもTQは最も重要な要素である. そして戦時の改革を市民レベルの救急医療に導入した点が重大な変化である. 現在, TQは市民レベルの外傷診療において世界中で適用される. 一方, 本邦では東京オリンピック前の2018年に「テロ災害等の対応力向上としての止血に関する教育テキスト」が出されたが, 救急隊による病院前のTQ使用に反対意見が少なくない. 本論文では古代から現状に至るTQの歴史を振り返り, その重要性と本邦で検討すべき課題を明らかにする.

第37回日本外傷学会総会・学術集会 抄録
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