日本外傷学会雑誌
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総説
外傷患者に対するトラネキサム酸投与の有効性 : 本邦での現状と病院前投与への展望
大森 一彦
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2024 年 38 巻 4 号 p. 510-520

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抄録

 目的 : 本総説は, 出血を伴う患者へのトラネキサム酸 (TXA) 投与の有効性を論じる. 特に, 外傷患者へのTXA早期投与が死亡率に及ぼす影響を検証し, 本邦の外傷治療における病院前投与の可能性を検討する.

 方法 : 医学中央雑誌, PubMed, Google Scholarを用いて, TXA投与に関する文献のナラティブレビューを行った.

 成績 : TXA早期投与が出血を伴う病態において死亡率を低下させることが示されていた. 特に, 外傷患者への病院前投与は, 死亡率を顕著に減少させることが示されていた. しかし, 本邦ではTXA病院前投与は十分ではなく, 適切な投与タイミングや管理体制の確立が課題として挙げられた.

 結論 : 本総説は, 本邦における外傷患者の治療にTXAを病院前から導入することの重要性を示唆するものである. 病院前TXA投与の導入により, 救急医療の質が向上し, より多くの命が救われる可能性がある. この実現のため, 政策や救急医療体制の見直しが望まれる.

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© 2024 一般社団法人 日本外傷学会
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