抄録
腹部打撲後に穿孔し4日後遅発性に症状が発現した外傷性直腸穿孔の1例を経験した. 症例は70歳台男性. 転倒にて下腹部を打撲するも直後は疼痛のみで軽快した. 受傷4日後突然下腹部痛を自覚し当院搬送, CTにて腹腔内遊離ガスを認め緊急手術を施行した. 直腸S状部に穿孔を認め高位前方切除を行った. 打撲により生じた全層性穿孔が周囲小腸の癒着により被覆され直後は症状を示さず遅発性に発症したと考えられた. 鈍的外傷による消化管穿孔では受傷から遅れて症状を発現する場合があり, 時間をかけて穿孔形成する遅発性穿孔の報告が散見される. 本症例は機序が異なり受傷後に完成していた穿孔が遅発性に発症した, 今まで報告のないまれな病態と考えられた.