抄録
本論文は、科学的研究における動物実験の倫理を問題にした。これまでのこの問題に関する論議を概観すると、実験を容認する側もこれに反対する側も、その主張に一貫性がなく、さらに倫理の基準と証拠が不十分であることがわかった。そして、両者の間で未だ意見の一致を見ないまま、倫理指針が作成されている現状がわかった。この指針がわれわれの行動にどのような影響をもたらすのか、それを議論するために科学と倫理の関係について触れ、両者は同じ次元で議論されるものではなく、科学と倫理の関係を包括的に理解するためには、人間行動の科学的理解と、そのための動物実験が必要であると結論した。そして、そのような理解は、行動分析学によって可能であると結論した。さらに、行動分析学が明らかにした行動の原理によって、動物実験の倫理に科学者がどのように関わるのが望ましいのか、この問題を明らかにした。最後に、倫理と、人ならびに動物の行動を分析する行動分析学、すなわち行動倫理の可能性を述べ、動物実験の倫理指針は、科学者の生産的な研究活動のプロンプトとして機能することが望ましいと結論した。