脳と発達
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症例報告
Paroxysmal sympathetic hyperactivityを認めたTUBA1A遺伝子異常による滑脳症の1例
小林 瑛美子赤座 花奈美尾﨑 眞人加藤 光広才津 浩智中島 光子渡邊 一樹今村 淳
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2024 年 56 巻 2 号 p. 130-133

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抄録

 発作的な筋緊張亢進,頻脈,多呼吸,高体温を反復しparoxysmal sympathetic hyperactivity(PSH)と診断した滑脳症の1例を報告する.本例ではTUBA1Aに新規のバリアント(p.(Ala281Val))を有していた.PSHは頭部外傷後や低酸素性脳症など広範囲な脳損傷後に合併する病態として有名だが,脳形成異常を有する小児でも認識されるべき病態である.病態はBaguleyらのexcitatory:inhibitory ratio(EIR)モデルに基づいて考察した.本症例では大脳皮質が菲薄で深部白質はほぼ存在しないために中枢自律神経線維網の障害を生じPSHを発症したと考えた.治療にはgabapentin(GBP)が有効であった.GBPが脊髄への非侵襲的な刺激の流入を減らし脳および脊髄内でGABA agonistとして作用し抑制性入力が増強され,交感神経および運動神経への遠心入力が弱まった結果PSHが抑制されたと考察した.脳形成異常症に合併するPSHの病態解明や治療戦略を確立するためには症例の蓄積が必要である.

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© 2024 一般社団法人日本小児神経学会
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