抄録
発達障害者の行動問題は、教育や福祉の制約をもたらしやすい。本研究では、エビデンスに基づく支援によって、こうした課題を解決するために、応用行動分析学がどのように貢献しうるのかについて、米国の動向を基に、わが国の現状を踏まえて検討した。米国においては、公的機関や関係団体が応用行動分析学の支援方法を推奨していた。そのエビデンスとして、シングルケース研究のメタアナリシスは、行動的介入が重度から軽度の知的障害を有する発達障害者の自傷や攻撃、常同行動を中心として、行動問題の低減に一定の効果をもち、機能的アセスメントがその効果に貢献していることを示していた。一方、適応行動の拡大を目指すpositive behavior supportは、エビデンスに先行して、障害のある個人教育法(IDEA)に反映され、急速に拡大していた。その背景には、米国における権利保障の制度的基盤や教育改革において、対象者の権利を保障する実質的な方法論を求める動きがあった。権利保障の基盤が不十分なわが国においては、行動問題に対する支援方法の不備が教育や福祉の制約に直結しうる。したがって、応用行動分析学のエビデンスに基づいて対象者の権利を保障していくことが極めて重要となる。そのためには、教育・福祉現場や行政当局と協働したエビデンスの開発や使用の方向性が考えられた。