2018 年 33 巻 1 号 p. 2-11
研究の目的 本研究では、これまでのセルフ・コントロール選択場面には組み込まれていない「損失」の随伴性を設定した新たなパラダイムを考案し、このパラダイムに基づいて測定したセルフ・コントロール選択と遅延割引との関係を調べることで、新たなパラダイムの妥当性を示すことを目的とした。また、先行研究でセルフ・コントロールに影響するとされる教示内容の効果についても検討した。研究計画 参加者間デザインを用いた。場面 新しいパラダイムに基づくセルフ・コントロール選択課題と遅延割引課題を実験室で実施した。実験参加者 大学生45名が実験に参加した。独立変数の操作 セルフ・コントロール選択測定における教示内容と遅延割引測定における遅延時間と報酬量を操作した。行動の指標 セルフ・コントロール選択率および曲線下面積(AUC)を指標とした。結果 教示内容が詳しい条件下でセルフ・コントロール選択率とAUCの間に有意な正の相関関係が見られた。また、教示内容の詳しい条件の方が、セルフ・コントロール選択率が高いことが示された。結論 教示内容の詳しい条件でセルフ・コントロール選択率とAUCの間に正の相関関係が見られたことから、新しいパラダイムは、実験参加者が随伴性についてのルールを理解した状況下で、セルフ・コントロールの個人差を測定可能である。さらに、教示内容の詳しい条件の方がセルフ・コントロール選択率が高いという事実は、先行研究の結果と整合的である。