2021 年 36 巻 1 号 p. 27-36
研究の目的 本研究では、強迫性障害と診断され、過剰な洗浄行為や除菌行為などによって仕事や日常生活に支障が出ていた対象者に対して、その日常場面において、家族の協力を得て介入を実施し、その効果を日常生活における行動指標を用いて検討することを目的とした。研究計画 行動間マルチベースラインデザイン。場面 精神科クリニックの外来心理面接および、対象者の日常場面。対象者 強迫性障害を主訴として精神科クリニック外来を受診した男性とその妻であった。介入 過剰な手洗いや除菌行為および入浴中の洗浄行為の減少を目的として、ERPを中心とした介入を行った。行動の指標 除菌シートのパック消費数および入浴後に布団で寝ることができた頻度を測定した。結果 介入によって除菌シートを使用することがなくなり、毎日、入浴後に布団で寝ることができるようになった。結論 強迫行為の減少に家族を介したERPが有効であった。またその際、対象者の日常生活において、強迫行為に関連した行動指標を測定し、介入の有効性を検証することができた。